また、夜が明ける
4
すももさんがこの学園の理事長…?夏桐さんは校長先生みたいなものって言ってたけど―――え!?若すぎませんか。こんなに若くて理事長になれるものなんだ。
驚いて目を見開く。
「っていっても、理事長やってんのはアタシの父。今は代理でやってるだ・け」
「そうなんですか……よろしくお願いします。」
-にこ
「やっぱ可愛い〜!!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。
く、苦しい……やっぱり男の人なんだと実感する。そうこうしていると、誰かが部屋の中に入ってきた。
-がちゃっ
「失礼します。」
「あら、はーちゃん。遅かったわねえ」
「はい。教室に忘れ物をしてしまいまして」
淡々とそう言う彼には見覚えがある。
さっき廊下ですれ違った…相馬、隼人さんだ。なんでここに……
「彼はこの学園の生徒会長で、相馬隼人くん。困ったことがあったら何でも相談してねっ」
「さっきも会ったな。よろしく」
す、と手が差し出される。
相変わらず無表情な顔だった。思えばさっきは俺が編入生だってわかったから言っただけだったのかも。
そう思うと段々気が沈んできた。
「隆一くん、こういう時は握手よ握手っ」
「はっ、はい!!」
すももさんに促されて、ついぎゅっと手を握ってしまった。相馬さんは驚いたように目を見開いた―――と言いたいがやはり無表情で。
「よろしく」
と、改めて言われただけだった。
「君のクラスは1-Aか―――なかなか優秀なんだな。案内しよう」
(優秀……?何で?)
すたすたと先を歩いて行った相馬さんを追いかけるのに必死で聞くタイミングを失ってしまった。
「じゃっはーくん任せたわよ〜」
すももさんはひらひらと手を振って見送る。この流れって…今から教室に行くんだよな。
(どきん、どきん、)
緊張してきた………!
相馬さんは歩くのが早くて、心の準備が全然できない。怖い。どうしよう。
-ぴたっ
「わっ」
いきなり相馬さんが立ち止まる。
どうしたんだろう、と相馬さんの様子を伺う。
「大丈夫だ」
「?」
「この学園の生徒はみんな良い奴だから…過剰に緊張する必要はない。」
「相馬さん……」
見てないようでちゃんと見てくれてるんだ。相馬さんの優しさのおかげか、だんだん鼓動が落ち着いてきた。
「ありがとうございます。」
「行くぞ」
わ、笑った!
ほんのわずかではあったが、確かに笑ってた。俺はなんだか嬉しくなった。
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