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また、夜が明ける
2





隆一は全くと言って良いほど教養が無い。編入させるとなれば、できるだけ近く、できるだけ――――管理人が身近にいる学校だ。

俺はある学園の理事長室にいた。



「よう」

「あーら政宗、昨日ぶり〜」



昨日デートの後に押しかけて来やがった憎い奴がそこにいた。…そう、京史郎は俺の取引先の相手―――隆一が編入する学校の理事長だ。

こいつを見る度思うが…日本の教育、終わったな。



「隆一くんの登校初日は来週からでいいのよね?」

「ああ」

「うちの学校留学生とかたくさん取ってるし、この時期からの編入なんて珍しくないわ。丁度メンツも入れ替え時期なの」

「それはありがたいな。……くれぐれもあいつのこと頼んだぜ」

「わかってるわよ〜可愛い私の生徒になる子で、政宗ちゃんのこ・い・び・とですものっ」

「………」



京史郎を殴りそうになったが、ギリギリのところで夏桐に止められた。
しかし、ニヤニヤしてた京史郎の顔が、すぐに真剣なそれに変わる。



「でも…隆一くん、お母様のことはいいのかしら。どこに関係者がいるかもわからないのに」

「構わねえ。あいつは今………」

「政宗…?」



あいつの母親―――――茉莉は、今…自分の息子を探そうなんて思っちゃいねえだろうからな。そんな余裕は無いだろう。それに隆一は母親が怖いんじゃなくて、その恋人の男が怖いんだ。
























「政宗さん…来週から学校に行かせてくれるって言ってたけど……今更緊張してきちゃったなあ。」



俺は今まで友達なんていなかったし、まともに喋ったことがあるのは母さんとその恋人たちくらいだった。恋人―――?



-ぞく、

「っ…、」



あいつの顔を思い出してしまった。
…最悪だ。神経を逆なでされた感覚がまだ続いている。お父さん…俺の本当の父さんは事故で亡くなった。もう顔も覚えてない。

母さんは父さんの写真や遺品全てを捨ててしまっていたからだ。

――――寂しい……会いたい。

早くあいつを忘れさせて。



「政宗さん………っ」



無意識に呼んでいたのは、いつも俺の側にいてくれる人の名前だった。

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あきゅろす。
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