また、夜が明ける Masamune's sympathy 「そうだ、お前にずっと勧めようと思ってたんだけどよ」 「はい、何ですか?」 俺はずっと隆一に言おうか迷っていた。隆一は、二重人格と家出っていう問題を抱えているからだ。どんなきっかけでリュウが出てくるかわからない。外でいつ誰に見つかるかわからない。リスクが高い。 だが、このままじゃリュウはここに引きこもったままになる。それはこいつの為にならない。俺は何度も心で繰り返した。 「お前、高校行ってみる気ねえか」 「……こう、こうって何ですか?」 「………」 「………」 互いに沈黙した。 忘れてた。こいつここに来る前も引きこもりだった。一気に体全体から力が抜ける。 ( 俺の勇気… ) 一通り隆一に説明をした。隆一は嫌がるだろうと思って、俺は3ヶ月間口出しはしなかった、が。 「俺、友達作るのが夢だったんです…ありがとうございます、政宗さんっ」 笑顔で承諾しやがった。 まあ、こいつの笑ってる顔が見れるんなら、もうどうでもいいんだけどよ。 ――――そうと決まったら、やらなきゃならんことがある。そう、リュウだ。あいつが承諾するかどうかに懸かってる。 リュウは気まぐれで、めったに姿を現そうとしない。現したら現したで、俺の邪魔ばっかだしな。 どうしたもんかね。 「政宗、さん?」 「ああ、ごめんな。…もし学校行くってなったら、できるだけ夏桐を側に置いとくから心配するな」 「はいっ」 「じゃあ、今日はもう寝ろ」 「わかりました、おやすみなさい」 俺は驚いていた。まず、隆一が学校に行くことに意欲的だってことに。 そして、隆一にリスクがある選択にも関わらず、リュウが横入りしてこなかったことにだ。 隆一はすやすやと眠っていて。 すぐ入れ替わって俺に文句の1つでも言いに出てくるはずのリュウが出てこない。―――お前も、学校に興味があるってことなのか。 これ以上考えを巡らせても無駄だと思い、もう寝ることにした。 ―――あいつが高校に行く。 あいつの中で何かが変わるといいな。 ――――― 「学校か……楽しみだなあ」 彼は笑った。 [次へ#] |