また、夜が明ける
2
「そろそろ離せよ…隆一にカマっ気が移るだろ。」
「いや!」
「こいつ…っ」
「政宗?」
「………」
京史郎さんが俺を抱きしめてから小一時間。政宗さんはどんどんイライラが積もってるって感じだ。取引相手だから邪険にできないから、政宗さんが怒鳴ろうとする度に夏桐に笑顔で止められる。
このサイクルがずっと続いて…なんだか居辛い。
「ったく、てめぇが誰だろうと関係ねえ。さっさと隆一から手を離しやがれ」
「あ、俺政宗さんの晩ご飯作らないと…」
政宗さん、お腹空いてるからイライラしてるのかな。俺たち晩ご飯は外で食べて来なかったし…そう思ってすももさんをじっと見つめた。
「かわいい〜!もう、政宗にはもったいないわあ」
「…あ、あの」
「はいはいわかってるわよ、今日のところは帰ってあげる。」
ぽん、と俺の頭に手を置いて、すももさんは俺から離れた。何だかんだで物わかりの良い人みたいだ。俺は、これで政宗さんの機嫌が直る、とほっとした。
『じゃあねりゅーくん。政宗にいじめられたらすぐ私のとこ来てチョーダイ』
すももさんは投げキッスとともにそう言い残して去っていった。…キャラ濃いなあ。
すももさんが帰ったところで、さっそく料理を作って食べてもらった。勿論政宗さんに。これで機嫌が直るかな、と観察してたけど、相変わらずぶっすーとあからさまに不機嫌だ。
(俺、何かしたかな…)
俺って鈍感って自覚はあるし、政宗さんの気に障るようなことを無意識にやっちゃってたのかもしれない。
とりあえず…何が気に障るかわからないから、そっとしとこう。
「隆一」
-びくうっ
「え、は、はいっ」
突然のことにびっくりし過ぎて、声が裏返ってしまった。…恥ずかしい。
「何ですか…?」
「京史郎…いや、すももはどうだった?相当濃かっただろ」
「あ…まあそうですけど、話しやすいし優しいし。俺は好きでしたよ?」
「………あっそ。」
ますます機嫌が悪くなったのは気のせいだろうか。うーん…政宗さんは本当にすももさんが嫌いで。身内(?)の俺がすももさんに好印象を持つことが気に食わないってことかな?
なんだかんだで仲良さそうに見えたんだけどなあ…
(隆一、お前どんだけ鈍感なんだよ!)
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