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また、夜が明ける
Kyoshiro




「下のもん使って場所を突き止めたのよ。で、他でもないあんたの直属の部下、夏桐ちゃんが入れてくれたんだから。」



玄関から飛び出してきた女性は、にやにやとしながらそう話した。この人すごく背が高いなあ。モデルみたいだ。



「夏桐てめえ…」

「そんな目を向けられる覚えはありませんねえ。無断で仕事すっぽかした上に連絡も一切断ち切ってたような性根の曲がってるような人には尚更」

「……」



なるほど。今の夏桐さんの息継ぎなしの一言で話が読めた。政宗さんはどうやら今日あるはずだった取引か何かをすっぽかして俺とデートしてたらしい。



「そんなことより仕事の話よ。」



ぴしゃり、と女の人が言った。
2人もその真剣な声に顔が引き締まる。そっか、この人取引先の人だった。



「で?あたしとの仕事をすっぽかす程の用事って何なのよ」

「お前との仕事をすっぽかすのに理由なんざそもそも要らねえだろ。」

「ま、政宗さんっ。取引先の人にそういうことは…っ」

「そーよねーっ、レディをどれだけ邪険に扱えば気が済むのかしら」



-ぶちっ
何かが切れる音が聞こえた気がした。もちろん政宗さんから。



「てめえ…自分のことをレディだなんてよく言えたもんだよなァ。大の男が、気持ち悪ぃだけなんだよ、クズ」

「そんな……っ」

「政宗さん、女の人に何てことを…」

「………いい」

「え、」

「いいっ!やっぱりいつ聞いても政宗のその口の悪さって最高!!」

「・・・へっ?」



女の人の目の色が変わった。心なしかすごくきらきらしてるような気がしないでもない。政宗さんは相変わらず面倒くさそうにしていた。



「…変態野郎が。」

「すももさん、じゃあお約束通りに。」

「ええ、話を通しておくわね。」

「え?え??」



何が何だかわからない。聞いていれば、取引は上手くいきましたって流れで。いつからそんな流れになっていたのか全くわからない。



「で?この子が噂の隆一くん?」

「は、はい。隆一、です」

「触んじゃねぇ。」

「はいはい。…李 京史郎(り きょうしろう)よ。すももちゃんってよんでね〜」

「はい、よろしくお願いしま……ん?きょうしろう、さん?」



どう考えても男の人の名前。でも、すももさんはどう見ても女の人の姿だ。やばい、俺頭が混乱してる。



「隆一くん、すももさんは正真正銘、男性の方ですよ。」

「えっ!?こんなに綺麗なのに…」

-きゅん

「はっ!今のは…まさかてめえか京史郎っ」

「すももって呼べっつんてんだろ!―――そうか、隆一くんかあ…覚えとくわね」



すももさんは俺をぎゅーっと抱きしめたまま離さない。男の人には見えないけどなあ。

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