恋は盲目と云うけれど
2
そして暁の美味しい朝ご飯を完食致しまして、2人でいつものごとく登校する。流石に手は繋げないため、横に並ぶだけ。それだけでも腹違いの噂は立つものなんだが。
例えば。
「淳也可哀想……あの非道な奴の下僕にさせられたって…」
とか、
「多分淳也が氷宮の弱味か何か掴んだんだよ。俺にも教えてくれないかなー」
とか。
その色は様々だ。
俺は暁を従えられる程肝は太くないし、しようとも思わないです!過ぎ行く生徒たちは目を合わせないように足早に通り過ぎるか、後ろから凝視しているかどちらかだ。
今となってはもうどうでもいいんだけどね。
慣れだよ、慣れ。
「AKIさーん!」
「あれ、大志だ」
「は、誰だそれ」
「あんまりですよ!」
もうお決まりとなった大志の毎度同じの登場にお決まりの暁の反応。これは地味に和む。あんなことがあった後に親の乱入で疲れきった俺は静かに癒されていた。
「おー皆居るやん。おはようさん」
「おはようございます。」
後ろから拓さんの声。
横にぴったりと付いているショートカットの女の子も挨拶する。…うわ、まじ可愛い。サバサバ系美少女だ。
「おはよう。えと、隣…」
「じゅんじゅんと会うんは初めてやもんな。これ、俺の彼女」
「え!?」
「これって何よ!」
「痛ぁっ!!」
き、強烈だ。
拓さんの足をかかとで思い切り踏んだ彼女さん。うーん、これはこれでいいコンビかも。
「よろしく、夏穂(カホ)って言います。これで一応拓の彼女。」
「淳也です、よろしくお願いします。」
「…っ、可愛い!」
だきっ
「わ、」
「こらあかんって、夏穂!」
拓さんが必死に止めるのには理由があった。そう、後ろで暁が負のオーラを放出しているからだ。見えない俺にも感じ取れる。成長したな、俺も。
「ああ、ごめん。こう見えて可愛いの大好きでさー」
「お前って奴は…」
「あはは、ごめんね氷宮」
「……別にいいっすよ」
嘘つけ!…ってあれ?暁が敬語で喋ってる。
「年上やからって調子乗んなや、夏穂」
「はいはい、ごめんてば拓」
と、年上!制服着てて暁より年上ということは。さ、三年生!?うわわ、まじですか。
「じゃあ、俺ら先行きますわ」
「ああ」
そそくさと逃げるように去っていった拓さん。夏穂さんも不満そうに引っ張られて行った。あ、嵐が去った……
「いいよなー拓哉。俺も彼女欲しー!」
「無理だろ」
「…………!!」
ぼやいた大志にすかさず切り捨てる暁。でもごめん、大志……………俺もそう思う。黙ってればそこそこ格好いいのにさ。
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