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恋は盲目と云うけれど
2








俺たち四人は静かに病室のドアをスライドさせる。いくら不良と言ってもちゃんと礼儀は守るもんだ、って暁は力説してたっけ。



「何処にいるんだよ」



病室には老人が多く、二代目暁らしい人は居なかった。



「あれ?前来たときはここ居ましたけど」



と、大志は一番奥のベッドを指す。確かに人が居たという形跡が遺っているからちゃんと居たんだろう。



「取り敢えず座って待ちましょう」



と、柏木先輩が奥のベッドに歩いて行った。俺たちも帰るわけにもいかず、それに続く。



「ちょ、あんた…拓!」



え?拓さん居るの?
近付くなり柏木先輩がそう叫んだので、俺たちはびっくりして目を見開く。

見てみればその拓さんであろう人は、窓側の壁とベッドの間にすっぽり入って俯いていた。



「………おい、拓」

「!!あ、AKIさん!」



見上げたその顔は、頭には包帯が巻かれているものの。綺麗な黒髪が肩につき、黒目が大きな若干垂れ目の瞳の美青年でした。なんだか皆不良には見えないな。むしろスポーツで青春しているような感じ。



「取り敢えず、出ろ」

「………はい」



拓さんは暁に言われるまま立ち上がる。うお、でか。暁くらいはあるかな。身近にこんな巨体が二人って何か居心地悪いんですけど。



「何でそんなとこ居たんだよ、拓」



うわ、大志がタメ語!初めて聞いた気がするんですけど。ん?じゃあこの人俺と同い年?………見えねぇ…



「…その、俺。AKIさんに顔向けできません……」

「あ?何でだよ」

「何でって…頭が負けるなんて、」

「お前は負けてねぇよ」



暁は拓さんの目を真っ直ぐ見て言った。きょとん、と暁を見返す拓さんはどうして?と言わんばかりの表情だ。



「卑怯な手で自分が勝ったとして、お前はそれが勝ちだと思うのかよ」

「それは勿論、思いません」

「じゃあお前は負けてねぇ」



な、と拓さんの頭をぽんぽんっと叩いた暁。ああ、暁が信頼を集めるのがわかる。ちゃんと皆の事を分かってるから。



「あ、AKIさ…」

「キモい、抱きつくな、死ね」

「はい!」



いや死ぬって返事駄目だから!暁のチームの人たちは皆こんな感じなのか!?



「あれ、そちらさんは…」

「あ、俺?俺は…」

「紹介して欲しかったら自分から言え」



出た、このパターン。
確か大志の時もそうだったよな、うん。別に俺から言ったっていいじゃん。暁のばーか、



「今"零"の頭やってる拓哉(タクヤ)って言います。よろしく」

「俺は淳也。えと、暁の…」



これは言っていいことなんだろうか。ちら、と暁を見れば目で大丈夫だって言われた気がした。



「存じてます。AKIさんの大切な人。あなたが淳也さんでしたか」



超格好いいんですけど。こういう人って年上にウケるんだよなあ。



「こら」

「ぅわっ」



じぃっ、と無意識に見つめていたらしい。暁が俺を後ろから体を引いた。その顔は小学生がお母さんに構ってもらえないときのそれに似ていて。ちょっと嬉しかった。ちょっとね。

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あきゅろす。
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