novel
ミルクティーとコーヒー
「お〜い、紫穂ちゃ〜ん?」
「なんでしょうか、「センセイ」」
 
明らかに機嫌を悪くしている紫穂に、賢木は呆れたように話しかけ続ける。
 
「何が気に入らないんだ!?
 菓子か、お茶か?!」
「センセイが気に入らないの」
 
語尾にハートが付きそうな勢いで言われて、賢木は椅子ごとひっくり返りそうな感覚に襲われた。
 
「だから、この部屋から出て行って?」
「・・・・ここ、俺の部屋なんですけど、紫穂サン?」
「そうだったかしら?」
 
使い慣れすぎちゃって、とお茶を飲みながら紫穂は軽々と、話に応じている。
そして、ミルクティーを飲みほして、そのまま賢木の肩に触れた。
  
{前にも言ったはずよ?
私は基本的に、チルドレンと皆本さん以外となれ合う気は無いし、気を許していない人と話すのは嫌いなのよ}
「じゃあ、なんで俺の所くんだよ?!」
 
俺って遊ばれてる?!、なんて。
馬鹿馬鹿しい台詞を吐いて、賢木はコーヒーを口に含む。
何か物を言う度に、その口から白い息がほくほくと立ち上る。
 
「・・・・なんで、センセイのはあったかそうなのよ・・・・」
「あったかそう、じゃなくて。
 あったかい、んだよ」 
 
ばぁか、と一言言われてムッとくる。
 
「しょうがないだろ?
 悔しくたって、お前のはミルクティーだからな。
 牛乳入れると、どう足掻いたって熱々は飲めないな」
 
先ほど自ら触れた掌から、逆に透視んだのだろう。
それはそれで、腹が立つ。
 
{そう怒るなよ}
{センセイみたいな人が一番、嫌いなのよっ!!!}
{つれないなぁ。
俺、結構本気よ?紫穂ちゃん}
{馬鹿っ}
 
ごっくん、とミルクティーを一気に飲み干す。
「ごちそうさま!」なんて、感情の篭ってないような返事をして、研究室から出て行った。
 
「本当につれねぇなぁ・・・・
 マジで本気よ?俺」
 
「高度エスパーだから、透視めねぇのかな?」なんて、自問自答。
あぁ、紫穂はリミッターつけてたっけ。と思いつく。
 
自分も、紫穂と同じように。


        
          苦い苦いブラックコーヒー。

tugi

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