ドッペルゲンガー[杏ほむ]
初めてあいつを見た時、まるで昔のあたしみたいだと思った。
それからしばらくして、ますますほむらはあたしになっていった。
目的のための執念に燃えた盲目にも似た瞳も、辛さを人に見せまいと耐え忍ぶ姿も、なにもかもあの頃の私だった。
「ほーむーらっ!」
「……なに。」
商店街の近くの公園で、あいつを見つけて、心が躍る。良かった、今日は会えたんだ。
「ほむら、また寝てねぇんだろ。顔に出てる。」
「うるさい。貴女には関係のない事よ。消えなさい。」
「今日はやけに冷たいんだな…」
そう言ってから苦笑まじりに笑えば、ほむらはつまらなそうに鼻を鳴らす。それから鋭く私をその目に捉えると、消えなさいと一言発した。
けれどあたしは怯まない。
さらにほむらと距離を詰めると、彼女は小さく身じろいだ。
「あんたさぁ…」
「貴女にあんた呼ばわりされたくないわね。佐倉杏子。」
「本当に可愛くねぇなー。あのさ、ほむらは何をそんなに頑張ってる訳?」
そう問えば、ハッとして私を見つめるほむら。あたしはそんなほむらをさらに追い詰めるかのように、質問を投げた。
「あんたは……なんでそんなに必死なんだい?」
なぁ…ほむら、と呟けば、目の前の青白い顔をした女はゆっくりと顔を上げた。
それから一言。
「貴女には関係ない。」
「あたしは、あんたを助けたい。あんた…そのままだったらいつか壊れるぞ。」
「その必要はないわ。」
くるりと踵を返したほむらの、長くて綺麗な髪がふわりと宙を舞う。
あたしはそれを目で追う事しかできなかった。だがそれでも構わない。あいつがあたしの言葉を受け止めなくても構わない。
これは多分、あたしの自己中心的なエゴだから。
「あんたの早さは…昔のあたしによく似てるよ。暁見ほむら。」
彼女の堕ちていく早さは、あたしによく似てた。だから、他人の事などどうでも良かったはずなのに、何故だか気になってしまうのだ。
昔のあたしはほむらに出会い、完全に死んでしまった。だから今度は私が今のほむらを殺そう。
そんな事をひっそりと決意しながら、小さくなっていく彼女の背中を見送った。
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杏ほむが好きすぎて、ついにやってしまいました!
杏子は自分が辛かったからこそ、ほむらの緊張とか苦悩が分かってしまうんじゃないかと妄想。
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