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※NL表現を含みます
「愛を誓います」
そんなセリフに憧れていた頃もあった。
幸せの形が欲しかったから。
私だって恋人は沢山いた。けれど彼らは人間で私はボーカロイド。
幸せにはなれないのだと知った時、私は憧れるのを止めたのだ。
***
「メイコさん!今メイコさんの部屋を掃除していたら、ブライダル雑誌が出てきましたけどー…?」
そう言ってルカがエプロンをして、掃除機を引きずりながらリビングにきた。
ある雑誌を持ちながら。
「ちょ…私の部屋まで掃除しなくていいのよ。それ返しなさい。」
「だってメイコさんの部屋は雑誌と本とお酒しかありませんから、私が放っておいたら溜まる一方ですよ?」
「私はその溜まる感じが好きなのよ。」
まったくそんな事はないが、他人に自分の部屋を弄られるのが嫌いな私は嘘をついた。
けれどそれが紙媒体の温もりだとは思っているので、あながち間違ってはいないかもしれない。
「ブライダル雑誌……ウェディングドレスに興味があるんですか?」
「そんなんじゃないわよ。人に貰ったの。」
「……そうなんですか。」
何かを察したように詮索するのを止めたルカ。まったく賢い妹だと感心するとともに、ルカが今何を思ったのかが知りたくなった。
「ちょっとルカ、今何考えたのよ?」
「メイコさんのご友人が、メイコさんが売れ残らないか心配して下さったのかと……痛いですメイコさん!」
軽く頬を抓ると、案の定ルカは話すのを止めた。
「言っておくけど違うわよ。」
「じゃあどなたに頂いたんですか?」
「……昔の彼氏。名前はもう忘れた。」
わざとつまらなそうに言うと、ルカの元々白い肌は青ざめ白くなった。
「…その方と結婚するつもりだったんですか?」
「全然。でも私もまだ若くて駆け出しの頃だったから、なにかと……ね。」
そう言って笑うと、ルカは言った。
「じゃあ、私と結婚しましょう。」
「は?あんた何言って……」
「メイコさんを奪います。」
そう言って車のキーを取り出すルカの目は本気で、嫉妬の色をしていた。
***
「ルカー。あんたの行動力って凄いのね。」
「メイコさんに褒められちゃいました!」「いや、全然褒めてないから。」
私達の会話は小さな教会内に響き渡る。
ルカの車で約20分ほどの小さな教会だ。
冷たい石畳とブーツが音を生み出して、心地良い。その足音もまた響いた。
「っていうか入っていいの?立入禁止ってあったじゃない。」
「私は英語しか分かりませんから読めません。」
「嘘つき。どっちも完璧なくせに。」
「いざとなったら、日本語分かりませんで通しますから心配しないで下さい。」
それは心配するべきだろうと思うが、ルカがあまりにも幸せそうな顔で笑うので、それ以上何も言えなかった。
「ここは、もうすぐ壊されるんですよ。」「だから黄色いテープがはってあった訳ね。」
「はい。その前にどうしてもメイコさんにここをお見せしたかったんです。まさにさっきのは絶好のタイミングでした。」
「口実なんて無しに素直に行きたいって言えばいいじゃない。」
と私が言えばルカはすみません、と笑った。
教会の一番目立つ所にあるステンドグラスが光を受けて光っている。
マリアと鳩の模様が象られたそれは、なんとも私を魅了するものだった。
ステンドグラスを見ていると、ルカは私の手を引き、中央にある壇に連れていった。
2人分の足音がホールに響く。
「……神父もウェディングドレスもケーキもないのね。」
冗談っぽく言うと、
「それどころか祝ってくれる方々もいませんよ。」
というルカ。けれどその顔は幸せそうだった。恥ずかしいがきっと私も同じ顔をしているのだろう。
「あるのは私達だけです。」
「嫌じゃないわよ、そういうの。」
「ありがとうございます、メイコさん。」
そう言って私はルカに抱き寄せられた。
何も言わずにいると、
「メイコさんが今日は素直です。」
だなんて蕩けそうな笑顔を向けてきた。
幸せとはこういう物なのかもしれない。
初めてそう思った。
「愛を誓います。」
「……」
「メイコさんを幸せにする事を誓います。」
「ルカを幸せにする……誓います。」
ずっと一緒にいますよ、と微笑むルカの唇に、私もと言ってからキスをした。
「永遠の愛を誓います。」
小さな教会に私達の誓いは響いた。
・*・*・*・*・*・*・*
みっこさんリクエストの密かに結婚式なルカメイでした…!
密かになってるのかな…?リクエストに沿えていたかかなり不安です;
ボカロなら永遠もありだよなーとか考えていました。
素敵リクエストだったのに、なんだかすみません。でも愛だけは込めました。
みっこさんリクエストありがとうございました!
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