6
久々の休日。
紅茶でも楽しもうと思いリビングに入ると、なにやらメイコさんが何やら隠れてコソコソとやっていた。
何をなさっているんですか?と声をかけながら覗くと、
すぐに振り向き、凄い勢いで隠されてしまった。
どうやら私に見られたくない物のようで、とても気に入らない。
けれど、丸く見開き少し私を睨んだような栗色の瞳が、なんとも可愛らしかった。
「ルカ…い、今の見た?」
「ふふっ…」
なんだか面白そうなので、意味深に笑ってみると、
メイコさんの顔は一気に青ざめた。
どうして焦っているのか何を隠しているのかなんて、検討もつかなかったが、とりあえず面白そうなので知っているフリをした。
「誰かに言ったりしたら、怒るわよ!」
ほう、言われては困る事らしい。
これは興味深いと思い、つい口元が釣り上がる。
その仕種にメイコさんは怯えたようで、青ざめた顔は今度は白く変わった。
「メイコさん。」
「な、何よ!本当に言ったりしたら嫌いになるわよ…!」
「それはこまりますね。私、メイコさんの事が好きですから。」
「じゃあ、誰にも言わないで秘密にしておくのね?」
メイコさんの顔に少しの安堵が浮かんだのもつかの間で、すぐに元の青白さに戻った。
「じゃあ、私の事が好きだって言って下さい。そうしたら考えましょう。」
「何言って……っ!?」
「言えないのなら、皆様に教えましょう。メイコさんが……こんな事をなさるなんて。」
呆れたように見つめると、なんだか泣きそうなメイコさんが映った。
私よりも少し年上に見えるのにも関わらず、たまに子供っぽく見える。そのギャップが私を堪らなく煽っている事を、この人はきっとまだ知らないのだろう。
私よりも5cmほどだけ高い身長の彼女が、子供らしく見えるというのも考えものではあるが。
「どうしますか…?」
「ど、どうしていつも、好きとか言わせたがるのよ……!」
「それは、まあ、恋人だからでしょうね。好きな人に愛を囁かれたいと願うのは普通です。」
「いや……そうかもしれないけど。でも私は、もっとお互いの気持ちとかを思いやって……」
それはタイミングを見計らえ……という事なのだろうか。
そうだとしたらメイコさんはまったく我が儘だという事になる。
「メイコさんだって私に好きと言わせたがりますよね。」
「それは別よ、別。」
拗ねたように言う我が儘なメイコさん。
リビングの隅の壁際にメイコさんを追いやると、彼女はビクリと肩を震わせた。
「さて、会話を反らそうとしても無駄ですよ。言い触らしますよ、全員に。」
「……やめてよ。」
頭の中で必死に逃げ道を探しているだろうメイコさんの表情がたまらなく可愛らしい。
今なら、壁際に追い詰められたメイコさんから、隠しているものを取り上げてしまう事ができるかもしれない。
そう思い、メイコさんが庇っていた小包に手をかけた。
抵抗はあったものの、力では私の方が勝っているため、その小包はあっさりと私の手元まで来た。
「や、やめてよ…!!」
「いやですね。」
メイコさんの必死の抵抗を押さえつつ、小包を開けてみると、
中から出てきたのはブーツだった。それも、メイコさんがいつも愛用している形と同じ物の、新品だ。
しかし通常のブーツとは何かが違っている。底に何やら詰まっているようだ。
私は過去に、リンの部屋でコレに似た物を見た事がある気がする。
「……これは、世に言う……シークレットブーツでしょうか?」
「……っ!そうよ、悪い?」
開き直ったような態度が可愛らしくて、思わず私の頬が緩んだ。
メイコさんもそれに安心したのだろう、今までの緊張した表現は段々と薄らいでいった。
「いつもこれを愛用していらっしゃいますよね?」
「うん。……今のが古くなったから、買い替えたの。それが今日届いて…。」
それを私に見つかったという訳か。
なんとも運の悪いメイコさんに同情したくな
るが、私の中に一つの疑問が残った。
本来シークレットブーツとは、身長が低いというコンプレックスを持つ人間が、
身長を高くみせるために使うブーツだ。
それを女性にしては高身長であるメイコさんが使用している、というのはいささか不自然であった。
「なぜメイコさんが身長を偽る必要が?」
「あんたのせい。」
どこかふて腐れたように見つめてくるメイコさんに、不思議そうな顔をした。
「なぜ私のせいなのでしょう。」
「…あんたが、素の私よりも身長高いから!」
「ああ、そういう事でしたか。」
つまりはメイコさんは私よりも低い身長を気にしていた、という事らしい。
それをブーツで補おうとしていたのだ。
「メイコさん。そのブーツ貸して下さい。履いているブーツもです。」
「なんで?まさか…あんた見せびらかしに行くんじゃないわよね!?なによ、私が身長で悩んでたのが、そんなに可笑しいの!?ルカの馬鹿。」
「そんなんじゃありませんよ。」
少しの苦笑を交えて微笑むと、メイコさんは少しだけ肩の力を抜いたようだった。
「こんな物は必要ないですから、処分しましょう。」
「なっ…必要よ!だって、私はあんたよりも年上だし、お姉さんだし、」
「そんな事関係ありません。メイコさんはメイコさんですから。」
薄い衣服から伸びた華奢な肩を抱き寄せると、メイコさんもまた軽く抱きしめ返してきた。
「それに、」
「なによ……」
「メイコさんが小さい方が、私からキスしやすいですから。」
そう言ってから私は、メイコさんの口を塞いだ。
・*・*・*・*・*・*・*・*・
凌さんリクエストのドS×可愛いのルカメイでした!
実はブーツで身長高く見せてたメイコと、最初はメイコに愛情表現して欲しかったけど可愛いからいいやと流されたルカの話。ドS×可愛い……になってないような気がしますが、私の力量不足ですすみません…!
等身大でいいんだよ、っていうテーマで書いてみました。
私の中で可愛い=足りない部分を背伸びという構図が出来上がりつつあるのが、残念すぎる…!!
凌さんリクエストありがとうございました!
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