[携帯モード] [URL送信]
5

艶やかな唇。少し大人びた雰囲気を出すため、薄く引いた淡い赤のグロス。

この日の為にいつもよりもしっかりと巻いたカールは、なんだか自分でも褒めてあげたいほどの出来栄えだった。

きっと今の僕は、どこから見ても色香零れる大人の女だ。

大人らしい台詞の数あるレパートリーの中から選んだ、とびきりのを言ってみる。


「大人の魅力……教えてあげるよ。」
そう恋人にそっと呟くと、恋人は案の定苦笑した。


「テトー…、あんた大人の魅力のカケラもないから安心しなさい。」
そう言って、僕と隣り合ってソファーに腰掛けているメイコはまた笑った。

「し、失礼な!僕なりに大人っぽくキメたはずだ!僕は完璧なはずで……」
「はいはい。分かった、分かった。」
「全然分かっていないじゃないか!いつものような子供扱いは、やめたまえ!」


ブツブツと文句をいってみたものの、メイコは気にも止めない様子だった。

それどころか、
「テトの髪はサラサラで柔らかいわねー」だなんて言って僕の髪を撫で始めた。

違うんだそこじゃない、カールをいつもより頑張ってみたんだ。と言いたかったが、メイコは全く気が付かない様子だった。


メイコの白く華奢な指が、僕の髪をすり抜けていく感覚は酷く心地が良いものだ。だからつい、僕はいつも流されそうになってしまう。


「だから子供扱いはやめろと……!」
「だってテトは外見はまるで子供なんだもの。」

メイコは手を止めずに、僕の一番気にしている事を笑いながら言ってのけた。

僕は三十路をとっくに超えているにも関わらず、体はまるで幼いままだった。
それをメイコは事あるごとにからかってくるのだ。


「いつもいつもからかって……僕だって気にしているんだぞ。」
「気にする必要がないって言ってるのよ。テトは小さくて柔らかいままがいい。」
「柔らかいのは君だってそうだろ。」

ニコニコと幸せそうに笑うメイコを見ると、胸の話題になりそうな予感がしたので、話題を逸らす事にした。

ちょうどいい話題が思いつかず、先ほどから疑問に思っていた事を尋ねる事にした。

「メ、メイコは……その、僕の小さい所を好きになったのか?」
「うん。」
「君は実に馬鹿だな。」

冗談よ、なんてからかうメイコの指先は、僕の髪の毛を梳くのを止めた。
そしてその指先は、僕の唇に優しく触れた。


「本当はね、テトの全部が好き。」
「……ふん。ありきたりな答えだな。そんな事で僕の機嫌をとろうなど、」

「テトの体も、大人に近付きたくて化粧を頑張るテトも、久々に会うからカールに余念がないテトも……テトの色んな表情も、全部好きよ。」

僕の言葉を遮って、真剣な表情で話すメイコ。

全て見透かすように笑うメイコが、今だけ少し憎らしいと思えた。


「……君は実に馬鹿だな。」
「こういう時のその口癖は照れ隠しだっていうテトも好き。」
「なっ……僕は別に……」

けれどそれを肯定するかのように、僕の顔は熱くなっていく。


「テト、大人の女っていうのはね計算で出来ているのよ。分かる?」
「……ああ。今のメイコを見たら、なんとなく分かった。」
「そう。じゃあ、そのグロス落としましょうか。」
「なんでそんなの……」


だって、と呟く恋人は艶やかに言った。


「大人の魅力……教えてくれるんでしょ?」

グロスなんてキスしてたら落ちちゃうわ、と付け加えて、
微笑を浮かべながら、口づけをしてくるメイコ。
まるで寂しがり屋な子供のようにしがみついてくるメイコを、愛おしく感じた。

柔らかなソファーが二人分の体重を包み込む。




「君は実に馬鹿だな…」


メイコだってこれじゃあ大きな子供じゃないか。という呟きは言わないで飲み込む事にした。




・*・*・*・*・*・*・

しげるさんリクエストのテトメイでイチャイチャでした!

これってメイテトじゃ…?と思われた方も多いと思いますが、私の中のテトメイはそんな感じ。
ヘタレな可愛い攻め…好きなんです。

唯一のテトメイリク嬉しかったです!書いててすごく楽しかった……オナカイッパイ

しげるさんリクエストありがとうございました!



[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!