ひんやり時間[唯憂]
「お姉ちゃん、何やってるの…?」
夏休み真っ只中、
憂は、リビングで夏らしくない、不可思議な行動をしている姉に声をかけた。
「あー、憂。なんか寒くてー。」
「エアコンの設定温度、下げすぎだよ。
18度なんかにしたら、体冷えちゃう。」
窓の外からは蝉の鳴き声が聞こえてくるというのに、
唯は靴下を履き、毛布を頭から被っていた。
「う゛ー、だって外は暑いし、アイスはもうすぐお昼ご飯だから、食べられないし…」
「それで、こんなにエアコンの温度下げたの?」
「うん。そしたら寒くて寒くて……」
「エアコンの温度上げたらいいのにー」
そういうと、唯は首を左右にブンブンと振った。
「だめっ!体を思いっきり冷たくするの」
「え?風邪ひいちゃうよ!?」
「それはいやだけどー…、もうちょっとだけー」
そう言って温度を上げさせようとしない唯に、憂は内心焦っていた。
このまま風邪をひいてしまったらどうしよう、という不安が頭を巡る。
そもそもエアコンをあまり使わない憂は、冷気が酷く冷たく感じる。
扇風機のものとは、また違った風が部屋を満たしていた。
そんな中にいる唯は、頑固な所があり、決めたらなかなか自分の意思を変えようとしない所がある。
憂は、諦めたように言った。
「しょうがないなぁ…、じゃああと10分だけだからね、お姉ちゃん。」
「分かったよー、ありがと憂。」
そういってリビングから台所に戻った憂は、手早く昼食の準備を再開する。
昼食と言っても、
暑さで食欲があまりないだろう唯のために、そうめんを茹でるつもりだった。
そうめんを茹でるためにお湯を沸かしていると、
いきなり後ろから抱き着かれた。
「なっ…!お、お姉ちゃん?どうしたの?もしかして調子悪いの!?」
「違うよ、憂ー。ほら、ひんやりするでしょ?」
「え……」
唯のエアコンの冷気で冷まされた、腕や頬は、憂の体を冷やしていく。
柔らかな唯に抱き着かれた上に、ひんやりとして気持ちいいとなると、憂は素直に
「うん、気持ちいい……」
と言ってしまった。
本来の憂なら、すぐに唯の体調の心配をする所だが、唯に抱きしめられた気持ち良さが心地好かったのだ。
「良かったー。憂ったら、いつも暑い台所にいるから、心配だったんだよー」
「今お湯沸かしてたから、暑いだけだよ。いつもは涼しいよ?」「そう?ならいいけど、憂が暑がってたら、私が冷ましてあげようと思って!」
そういって笑う唯に、憂も頬が緩む。
「ありがとう、お姉ちゃん。もしかしてそのために、体冷やしてたの?」
「うん。気持ちいいでしょ?」
「うん…。とっても幸せな気分。」
でも、エアコンで体冷やすのは心配だなあと思う憂だったが、
今はその言葉を飲み込んだ。
「ねえ、お姉ちゃん。大好き。」
「私も大好きだよー。」
しばらくして
互いの体温と、お湯から発せられる熱で唯の腕が温まっても
二人は、互いを離さなかった。
・*・*・*・*・*・*・
初唯憂小説…!
唯ちゃんをふにふにしたいです。
※本家では唯はクーラー苦手だそうです。ご指摘ありがとうございました!
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