こ話
幸せのカタチ[ルカメイ]
「メイコさん!みて下さい!」
いったい何事かと思って振り向くと、息を切らせたルカがいた。
「どうしたのよ、そんなに急いで……」
「これです!幸せのピノ!」
そういってルカはアイスのパッケージを、ぐいと私に近づけた。
そのアイスは普通は丸い形なのだが、1粒だけ星形をしたアイスがあった。これがあると幸せになる、という宣伝文句だったはずだ。
「良かったじゃない。」
「はい!これでやっと……」
そう言いかけて、ルカは口を閉じた。
そうして少しもどかしいような表情の後、困ったような顔をした。
「どうしたの?」
「……どうしましょう、メイコさん。私、これ以上幸せになっていいんでしょうか?」
ルカは少し悩んだ後、こう続けた。
「メイコさんがいれば、幸せですし。」
「……そう。」
まったくこの子は突然に恥ずかしい事を言ってくるのだから、こちらが困ってしまう。
顔が熱くなるのを感じた。
またこの子の計画にハマったのだ。
「じゃあ…これはメイコさんにあげます。」
そう言って、たった一粒だけ残ったアイスを差し出してきたルカ。
私には必要ないです、と付け加えてくる辺りが彼女らしい追い撃ちだった。
ルカは、私がそんな事言われたら、貰えないのを分かっているのだから。
しかも欲しい言葉を貰うための行動だろうから、私もなぜだか甘やかしてしまう。
だから、
「いらないわ。私もルカがいれば、それで幸せだから。」
ルカの欲しい言葉をあげた。
「ありがとうございます、メイコさん。」
そうしてルカは笑う。
満足げに、綺麗なアルトで。
「じゃあ二人で食べましょう!そろそろ溶けてしまいますし……」
「え、でもどうやって」
「こうするんですよ……」
ルカはそう言って、アイスを口に含むと私に口付けた。
口の中に広がる、バニラとチョコレートの甘さが、なんだか今は疎ましかった。
そんな私の思いを知ってか、ルカは
「私、すごく幸せです。幸せなんです、メイコさん。」
なんて言ってまた笑った。
二度目の口付けは、何の味もしなかった。
(2010.10月拍手お礼小説)
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