はんぶんこ[ルカメイ] 「お姉様。口を開けて下さい。」 「絶っ対に嫌よ!」 嫌がるメイコの目の前に、嬉しそうにルカは1口分のケーキの乗ったフォークを差し出した。 真っ赤なラズベリーと、純白の生クリームのやや小振りのケーキ。 それは、今若い女性を中心に人気のケーキで、ルカが朝早くから並んで買って来たものだ。 「大体、買ってきてくれたのはいいけれど、どうして1つしか買わなかったのよ?」 朝、家を出る際にメイコは確かにルカに、自分の分も買ってきて欲しいと頼んだはずだった。 しかし、ルカが買ってきたのはラズベリーのケーキ1つだけ。 それはいいとしても、ルカはせっかく買ってきたケーキを、自分で食べようとするそぶりを見せなかった。 「せっかくルカが買ってきたんだから、あんたが食べなさい。」 「これはお姉様の分です!」 「は?だって、あんた1つしか買って…」 「だから、はんぶんこ…しましょう。」 ルカは、ずい、とフォークを口元に近づけてくる。悪戯っぽい笑みと共に。 「ほら、口を開けて下さい。お姉様。食べさせられないです!」 「だから、私はあんたに食べさせて貰わなくても……」 そう言ってみても、ルカは一向に引くようなそぶりを見せない。 「さあ!あーん…」 ニコニコと満面の笑みを浮かべながら、メイコの口にケーキをつける。 するとその柔らかい唇は、少しだけ開かれ、フォークを受け入れた。 「美味しいですか?」 「……ま、まあまあね。」 少し頬に赤みがさす。 「それは良かったです。実は、このケーキお姉様に似てると思って、買ってきたんです。」 ラズベリーの赤にどうしようもなく、魅せられて。 誰かを思い出して、焦がれて、魅了された。 「私は食べられないわよ。」 「私には美味しそうにみえますよ!」 とルカが言うと、メイコは微かに笑って、ゆっくりとフォークをとった。 そして一口分のケーキをフォークに乗せると、ルカの口元へ近づける。 「ほら、次はあんたの番よ。口開けなさい。」 「お、お姉様!?い、い、いいんですか?」 「何動揺してるのよ。ほら、あーん…」 甘くて蕩けてしまいそう。 そんな時間を、あなたと"はんぶんこ"。 *** メイちゃん頑張った! 生クリームと聞くと、イケナイ想像するのは私だけですか。そーですか。 [*前へ][次へ#] |