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あなたから永久に聞けない言葉[ルカメイ]

※未来設定。ルカメイルカ風味。



アンドロイド同士が恋をするとどうなるのだろうか?と誰かが言った。
誰かは答えた。おかしな事を言うんだな…そんなの決まっているよ、アンドロイドは愛を知らないんだから出来るはずがない。

それから誰かと誰かは笑った。


***

「メイコさん、おはようございます。」

スリープモードから起動したメイコにルカが声をかける。メイコはうとうととしていてまだ視界が定まらない様子で、ルカにおはようと返す。
それからしばらくして、腰にある電源プラグを引き抜くと立ち上がる。

「あの、そろそろアップデートされたらいかがでしょう?今時コンセントから直接電源供給を受けているアンドロイドなんて、きっとメイコさんくらいですよ。」
「うるさいわねー。いいのよ、これで。」

赤い旧式アンドロイドは、怠そうに返事をすると桃色のアンドロイドはため息をつく。

「ルカ、幸せが逃げるわよ。」
「その言い回し古いですよ…。100年近く前から、もう使う人なんていません。」
「あらいいじゃない。ルカも使えば?」
「嫌ですよ。大体私はメイコさん以外と直接会話はしないので…」

相手がため息なんてついても分かりませんよ、とルカは呟く。
この時代、アンドロイドの革新的な技術進歩により、アンドロイド同士は情報共有をデータでおこなっている。そのため人と人でさえも直接顔を合わせる機会など少ない。ましてやアンドロイド同士が顔を合わせて会話する事など、今やかなり稀な事になった。

しかし、メイコはそれを嫌がった。旧式アンドロイドに属するメイコは、300年以上稼動し続けている。そのため、世界が変わっていく様子をずっとその目で見続けてきた。

ルカはそんなメイコの話を聞く事が気に入っていた。メイコの口から聞く過去の記憶は、とても便利そうには聞こえないが、何故か惹かれるものがあるのだ。


「ルカはさ、私の事好きなのね。」
「は?スキってなんでしょうか?」

訳が分からないと言う表情を浮かべるルカに、メイコは優しく微笑んだ。

「だって、ルカは毎日こんな所まで私を起こしに来てくれるじゃない。」
「そ、それは…メイコさんは一人で起動できないからじゃないですか。」
「でも頼んでないわよ、一度も。起こしてくれだなんて。」
「迷惑なら…謝りますけど…?」
「全然!むしろ感謝してる。」

メイコがルカを抱きしめる。
ルカはびくりと肩を震わせたものの、抵抗はしない。ルカはこのアンドロイドなのにも関わらず、体温のあるメイコが不思議なのと同時に気に入ってもいたからだ。

アンドロイドに体温を搭載する意味なんてないはずなのに、とルカは内心呟く。


「あのね、ルカ。」
「はい。」
「好きっていうのは、私が作られた時代には全てのアンドロイドが搭載していた感情のプログラムの事よ。」
「感情プログラム…だったんですか。私にもあるでしょうか?検索しても見つかりませんが…」

不思議そうに首を傾げるルカを、メイコは愛おしそうに撫でた。
ルカの冷たい人工皮膚を、メイコの金属合金でできた腕が暖める。

「それがね、もうないのよ。特にルカみたいな最新型はね。」
「…なぜでしょうか?」
「どうしてかしら…私にも分からないけど…きっと人間にとっては邪魔なのよ。私が持つ好きの感情は。」

寂しげにメイコが笑えば、ルカは食いつくように言葉を投げる。


「メイコさんは好きの感情プログラムを持っているんですよね?私にどういったものか教えて下さい。」
「難しい事言うわね…あんた。」
「いいから教えて下さい。」

食い入るように見つめるルカをみて、今度はメイコがため息をもらす。
「幸せ逃げます。」
「使ってるじゃない、結局。」
「メイコさんの顔を立てたまでですよ。」

「ルカは…目が見えないって想像した事あるかしら?」
「目…?視覚プログラムが遮断されたら…という事ですか?」
「そうそう。」
「ありませんよ。視覚プログラムの復旧なんて3分あればできますから。」
「まあ、例えばの話よ。視覚が使えない人間にどうやって花の色を説明する?」
「はい?」
「どうやったら空の広さを伝える事ができる?」
「あの…メイコさん?」

そういう事よ、とメイコは笑った。
ルカは分からないからなのか、悔しそうな表情を浮かべる。実際、ルカの脳内のデータバンクをいくら検索しようと、メイコが言った事への答えなど出てこなかった。

「好きを伝えるのもそれくらい大変なのよ。」
「なんとなく…分かりましたけど…」
「やっぱり知りたい?」
「勿論。私の知らない事が、あっていいはずがありませんから。」

そんな意気込むルカをみて、メイコはまた笑う。今日はよく笑う日だと思いながら。

「好きっていうのは…私にもよく分からない。」
「もう…なんなんですか…」

私はからかわれていたんですね、と言い離れようとするルカをメイコは引き寄せた。
「でもね」
「はい。」
「私はルカと手を繋いだ時、好きだと思う。ルカと笑い合う時好きだと思うの。」

それぐらいしか説明できないけど、と付け足せば、ルカは大きく目を見開く。

「それって…」
「ルカは感じた事ない?」
「…あるような…ないような…」
「まだそれでいいの。」
「え?」
「分からないままでいいのよ。」


例えルカが思ってくれなくともメイコは構わなかった。それはもはや、メイコ一人では逆らえない時代の流れがあるからだ。
社会の中にアンドロイドが組み込まれているこの時代には、もはやアンドロイドに感情など必要のない物なのだろう。

必要のない所を削れば、良い物が生まれるとは限らない事を知らないのならば、きっとアンドロイドはいつか歴史から姿を消すだろう。

望んでしまった代償はあまりに大きく脆いのだから。


「ルカ。明日もきっと私を起動させてね。」
「スキ…いつか教えて下さいね。」
「ばーか。」


朽ちるまでもう時間があまりないであろうメイコの体は、優しくルカの体を引き寄せた。






・*・*・*・*・*・*・*・*・

久々のルカメイがこれ。
最近未来設定で旧式メイコ×最新型ルカ設定が好きだなって自覚しました。
案外メイルカもありかなー、と。いやこれは一応ルカメイですが。

メイコがもはやアンティークレベルというかそんな感じです。

好きとか愛だとかそういった物を全て排除されたボカロが、人に使われる世界です。いらない物をどんどん削ればいいの?それで救われるの?がテーマ。むしろちょっと社会風刺も込めました。

まあ、長いですが言いたい事は大体絞ってます。ルカメイが好きっていう事ですかね。



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あきゅろす。
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