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clone&...[ルカメイ]<2>

※このSSは『clone&...<1>』の続きです。


ある時、久々の休日をMEIKOと過ごし楽しんでいると、MEIKOは私に質問を投げかけてきた。

「マスター。」
「なにかしら、MEIKO。」
「私はマスターを愛するべきなのかしら?」

真っすぐに見つめられたその瞳を、ゆっくりと見つめ返せば、さらに力をこめられる。

「…それはどういう事?MEIKOは私が嫌い?」
「違うの。マスターは私を作ってくれた人で…とても感謝していて…それで…」

先ほどの強い瞳とは裏腹に、なにやら吃りはじめたMEIKOを見て私は苦笑する。
そして、これもMEIKOの成長の成果であると実感する。抑え切れなくなった感情を、言葉にする事で整理し、かみ砕いて消化しようとする…。実に人間らしい行為だ。


「…マスターは私を愛してはいないでしょう?」
「どうしてですか?」
「だって、マスターは…いつだって私を通して誰かを見てるもの。」

そんなの私は辛いよ、と呟かれた言葉。
辛いという感情を覚えるのに、あんなに苦労していたMEIKOを思いだし、本日二度目の苦笑をもらした。

「つまりそれは、私を誰かの代わりとして作ったっていう事でしょう…?」
「…それは間違いではありませんね。」

私がそう口を開けば、MEIKOは途端に傷ついたような表情を浮かべる。

そんなMEIKOをただ黙って見ている事など出来なくなって、私はその形の良い唇に思い切り吸い付いた。
口の端からこぼれ落ちる熱っぽい吐息が、私の思考を鈍らせて、どろりと溶かす。MEIKOも赤みを帯びた顔で、長いキスに応じた。
その細い肩を抱き寄せれば、慣れた手つきで私の首に腕を回す。それほどまでに、私達はこの愛を確かめるような行為を重ねていた。

「ルカ。」

MEIKOはメイコさんのように私を呼んだ。
まだ出会ったばかりの頃のように若々しいメイコさんが、私とキスし名前を呼んでくれている。そう思うだけで、愚かな私は自分を制する事が難しくなる。
事実、私は目の前にいる『メイコさん』にひどく欲情していた。

すると私の気持ちを感じとったのか、慌ててMEIKOが私から離れた。

「マ、マスター!人の話聞いてた?」
「聞いてましたけど…MEIKOが可愛かったのでキスしました。いけませんか?」

すると顔を真っ赤にしたMEIKOが、すかさず答えた。

「だったら…だったら私じゃなく、マスターが私と重ねてる誰かとしたらいいじゃない…っ!」

見ると目に涙をためたMEIKOがそこにいた。今にもこぼれ落ちそうな涙を、私がそっと指で掬えば、すぐに睨まれる。
本気で聞いてるんですか?と小さく呟かれ、答えない訳にもいかず、私はMEIKOの耳元でこう囁いた。

「それが出来れば…とっくに…」しています、と小さく搾り出すように言えば、MEIKOは何か辛そうな顔をした。
そんなMEIKOの様子を私は無視し、抱きしめた腕を強める。細い彼女にとっては痛いであろう強さだが、今は抑えるだけの余裕などなかった。
きっと彼女の涙が私にも、移ってしまったのだろう。

「マスター…」

そう遠慮がちに呟かれた声をまた無視し、私は無理矢理微笑んだ。
それから彼女を私の腕の中から、優しく解放してやった。

「ごめんなさい、MEIKO。…あなたを生み出してしまって、本当にごめんなさい。」
ずっと思っていた。
多分MEIKOを起動したその時から、私はずっと心の中で自問自答を繰り返していたのだ。
これは空虚な行為である事に。絶対に自分の手に入れられない宝物を、無理矢理生み出し、自分のしたかった事を叶える。それがいかに幼稚であり、神に背く行為だという事も分かっていた。
事実、私はメイコさんにしたかった事をMEIKOにぶつけているだけにすぎない。キスする事、一緒に住む事、笑いあって手を繋ぐ事…全てが全て、メイコさんと私がしたかった事にすぎないのだ。

それを私は、愛という免罪符を片手に、MEIKOを生み出してしまった。挙げ句の果てに、メイコさんにしたかった事をすべて押し付けてしまったのだ。

私は今更後悔し、自己嫌悪に陥った。自分はなんて我が儘に振る舞い、愚かしくあったかをたった今自覚したのだ。

なぜなら彼女は、『MEIKO』であり、『メイコさん』では決してないからだ。


「ごめんなさい…っ。本当に、私は貴女に『メイコさん』である事を押し付けて…こんなキスまで…本当にごめんなさい。」

しかし、ただただMEIKOへの謝罪の言葉を並べる事しかできなくなったそんな私に、MEIKOは優しく微笑んだ。

「やめて、マスター。生んでごめんなさいなんて…そんな悲しい事言わないで。」
「MEIKO…」
「私こそごめん。こんな質問して…」

私はマスターを好きなだけよ、と呟いてからまた謝られた。
と同時にMEIKOは再び私の腕の中に飛び込む。柔らかな温もりが、私に縋るようにしがみついた。

「私…MEIKOが好きです。」


小さく震えている私の腕の中の温もりをあやすように、私は言った。
それは紛れもなく『メイコさん』ではなく『MEIKO』に向けた言葉だった。
いつしか抱き始めていた感情であり、許されない思いだと知り押し込めていた言葉。
それから優しく、その柔らかな髪を撫でる。

やがて、MEIKOはそれを受け入れるかのように、私に体重を預け目をつむった。



・*・*・*・*・*・*・*・

長いよっ!というツッコミお待ちしております。と言わんばかりです、すみません。
前編を上げてから後編を上げるまでに、時間があいてしまい申し訳なかったです。

カイメイ←ルカだけど、MEIKOとルカが絡んでるので、ルカメイ!という無理矢理な解釈です。ルカはメイコが去ったら、諦めないだろうな…と思って書きました。

ハイパー可愛い姉さんなMEIKOになっていたら本望です。



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