貴女は私に相応しい[ルカメイ←リリィ]
※ネタバレになるので直接表現は避けますが、リリィさんが不安定な子です。注意。
「メイコ、愛してるよ。」
その一言から、リリィの一日は幕を開ける。
だらしがないメイコはいつもリビングのソファーで寝ている。時計はもうお昼を指しているにも関わらず、まったく起きる気配のないメイコを見遣り、ため息をつく。
しかしリリィは起こしても無駄だろうと判断して、朝食の支度をする事にした。
「まったく…メイコは仕方ないな。」
拗ねたように、けれど幸せを含み、リリィは小さく笑う。
それから、昔メイコが好きだと言っていたタコのソテーでも作ろうと考えて、やめた。冷蔵庫の前で立ち止まる。
しばらく立ち止まった後、リリィは脱力感に襲われた。
急に面倒になって、冷蔵庫にかけた手を下ろす。
リリィは自分の金糸のような髪を、無造作にボリボリと掻いた。それから二度目のため息をつく。
手持ち無沙汰になったリリィは、頭の中で名案を閃いた。
「…メイコの寝顔でも見てやるかな。」
そう言ってリリィは、悪戯好きな子供のような笑みを浮かべる。
スリッパと床の擦れるパタパタという音にも、気にせずにメイコの側へ行った。
そこには先ほどと全く変わりの無いメイコがいた。
ソファーで静かに眠る彼女に、リリィは一瞬ドキリとする。
「ははっ…子供みてーな顔して寝るんだな、メイコは。」
また幸せそうな顔をして、リリィはそっとメイコの髪を撫ではじめた。
柔らかくて艶やかなその髪は、リリィのお気に入りだ。
昔はよく説教や小言を言ってきた唇を、リリィは優しく自身の唇で塞いだ。
「メイコの唇は甘いんだな。」
なんて、いつも言わないような事までリリィが呟く。
彼女はまた愛しい人の髪を撫ではじめた。彼女にとってこれは幸せそのものの行為だった。愛してるだとか好きだとかいう言葉では埋まらない何かを、埋めたかったのだ。
「なぁ、メイコ。アタシは今幸せだよ。すっごくね。」
メイコは黙っている。
「だから、そろそろ起きなよ。」
メイコは黙っている。
「アンタが眠って、今日で二日目だね。」
メイコは黙っている。
「もうあの女は来ないよ。大丈夫だから。安心して目を覚ましなよ。」
もしも生き返ってまたメイコを奪おうとしたって、私がメイコを守るよ、とリリィは囁いた。
けれどメイコは冷たく、表情を固めたまま黙っている。ずっと。きっとこれからも永遠に彼女は目を覚まさないだろう。
リリィはそれを知っていながら尚、語りかける。
そしてまた唇を塞いだ。眠りにつく直前まで、リリィではない女の名前を呼んでいたその唇を。
今その女は冷蔵庫の中に閉じ込めてある。リリィがメイコの眠りを看取ろうとしたその時に邪魔をしに、この家までやってきた憎らしい女。
リリィはその女の最後を思い出して、狂気を纏った笑みを浮かべる。
「あの女……、確かルカとか言ったっけ。確かアイツも、メイコの名前を叫びながら死んでいったよ。」
リリィはメイコに語りかけるように話し始めた。
「メイコは、アイツと付き合ってた訳…?どうなの?返事しなよ、メイコ。」
けれどメイコの返答は当然無言で、リリィは髪を撫でていた手をメイコの頬に添えた。
今となっては冷たく、少し固くなってしまった肌。それを感じてリリィは少し悲しげな表情を浮かべた。
「ずるいよ、アイツは。」
リリィは堪らなくなって、メイコを抱きしめた。ソファーが二人分の重さに、ギシリと鳴った。
「死ぬ時でも互いの名前を呼び合うなんて……それじゃあ、まるで両思いじゃん…。」
メイコを抱きしめた手にリリィは力を込める。本来なら痛みを伴うが、今のメイコは黙ったままだ。
リリィは何故か笑いが込み上げてきて、大声で笑った。
今までの悲しみや懺悔や愛しさを全て吐き出すようにして、搾り出すように、リリィは笑った。
誰に気にする事もなく、ただ笑い続けた。
その笑いがいつか止んだ時に、
「愛してるよ、メイコ。」
その言葉で、リリィは人生は幕を閉じる。
・*・*・*・*・*・*・*・
初ヤンデレでした…!
意外と言われますが、ヤンデレ割と好きなんです。でも書くのは苦手で…。
ルカメイ←リリっていいなぁと思い、ヤンデレに挑戦してみました。
そうしたらいつも以上に、ひ、ひどい事に……!すみません。
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