二人分のプレゼント[ルカメイ]
※2010メイ誕小説
今日は私の恋人であるメイコさんの誕生日だ。
勿論私も優しく微笑みかけて、
「誕生日おめでとうございます、メイコさん」
なんて言ったけれど、何しろ私の恋人は人気物だ。
私の言葉は、その他のものにすぐに埋もれた。
今日、沢山のファン達からの贈り物やお祝いのメッセージカードが、自宅へ送られてきたからだ。
玄関では今もカイト兄さんが忙しそうに、荷物の受け取りに追われている。
けれどこれは私達にとっては毎年の事であり、特にミクの誕生日はもっと忙しい。
何しろ送られてくるプレゼントの数が膨大なのだ。
けれどミクと違い、メイコさんのファンはコアな層が大半を占めていて、量は多少少なくともプレゼント1つの額が桁違いだ。だから、扱いにも神経を使わなければならない。
当の本人はあまりそういう事には興味がないらしいが……。
私はリビングで一人、メイコさんに宛てられたメッセージカードを、送り主の名前順に分けながら、ため息をつく。
「なんて面倒な……」
思わず漏れる本音。そして二度目のため息。
そして胸を引っ掻き回されたような、まるで曇り空のようなジェラシー。
顔も知らぬ人から恋人への愛が沢山綴られたこの紙切れを、何故私が……。
私はメイコさんを独占したい欲望に駆られていた。
恋人の誕生日ほど特別な日は、他にないだろう。せめてその日くらいはお互いの事だけを考え、一日中手を繋いで過ごしていたいのだ。
なんて考えて、無理な事を考えるなと自分に言い聞かせる。
無理に決まっているのだ。だって私達はボーカロイドであり、皆の歌姫でなくてはならないからだ。
ここで三度目のため息をついた。
「ため息ばっかりついてると、幸せが逃げるわよ。」
あわてて声の方を向くと、メイコさんがいた。
「なにつまらなそうな顔してるのよ?それ整理するの疲れたなら、変わるけど。」
そういって私の手元にある山のようなメッセージカードを指差した。
「いえ、そういう訳では……。それにメイコさんは電話の応対していたはずでは?」
「んー…。なんかルカの声聞きたくなったから、一時中断。」
そういって笑うメイコさんの言葉が嬉しいだなんて思う自分は、きっとこの人に溺れきっている。だって喧しく鳴り続けている電話の音は、私の耳にも入っているのだから。
「ルカ。私、今日誕生日な訳じゃない?」
「そうですね。お陰でジェラシーに苛まれてます。」
「…そう。でね、私の誕生日プレゼント代わりに、お願い…聞いてもらってもいい?」
お願いとはメイコさんにしては珍しかったので、驚いた。
だが、それを見透かしたかのように、誕生日なんだからいいじゃない!と付け足された。
「ですが誕生日プレゼントなら、既に用意してありますよ?」
「まあ、ルカの事だからきっとそうだと思ってたわ。」
「その辺は抜かりありません!」
「ちなみに何?」
「勿論ナース服……ちょっとメイコさん怖いです。嘘ですよ、珍しいお酒が手に入ったのでそれを……。」
本当は夜にやるはずのサプライズパーティーで告げて、メイコさんを驚かせるはずだった。
しかしこの状況では仕方ないし、何よりメイコさんが喜んでいるようなので良しとしよう。
「それでおねだりってなんでしょう?」
「おねだりじゃなくてお願いよ!」
「そうでした。ナース服のメイコさんを妄想していたので、つい変換されてしまいました。」
もはや突っ込みもいれてこないメイコさん。
呆れた顔でこちらをみている。
だが、改まった様子で咳ばらいをし、私の方に手をおき、私に言った。
「あんたの誕生日、ちょうだい。」
一瞬耳を疑った。意味が分からない。
「あの……もう少し分かりやすいように説明をお願いします。」
「だから、あんたの誕生日は私と一日過ごして欲しいって言ってるの。勿論二人だけでって意味よ。」
思考がフリーズした。どう反応したらよいのか分からなくて、メイコさんの目を見つめると、恥ずかしそうに微笑まれた。
さらにメイコさんは言う。
「その日は一日中、二人だけで過ごして手を繋いでいるの。素敵じゃない?」
「……素敵。とても素敵です。」
嬉しさのあまり声が上手く出ない。やっとの事で、その言葉だけを伝える。
「メイコさん。私も同じ事を考えていました。メイコさんの誕生日は二人だけで過ごしたいと……」
「あら。それは奇遇ね。」
「でも、それじゃあ一年に二回もプレゼント貰う事になりますね。お互いに。」
そういうのも素敵よ、だなんて貴女が笑う。
くすぐったいような幸せだった。
「じゃあ、今からでも二人で出かけましょうか。静かな所へ。」
「ルカも行動力あるのねー。でも、ルカからのプレゼントだし、受け取ってあげるわ。」
いや、私にメイコさん程の行動力は無いと思う。私だって二人だけで過ごす事を諦めたにも関わらず、メイコさんはその約束まで取り付けてしまったのだから。
けれど、そんなメイコさんだから好きになったのだから仕方ない。
だから私も、
「素直じゃないですね。」
そうして私は、
鳴り響く電話の呼び出し音、貴女への愛が綴られたカード、沢山届くプレゼントの山。
その全てから、メイコさんを奪う事にした。
「メイコさん、誕生日おめでとうございます。」
「ありがとね、ルカ。」
そして生まれてきて、私を愛してくれてありがとう。
・*・*・*・*・*・*・
メイコさん誕生日おめでとうー!
どうにか間に合いました;
この後は、カイトやリンレン、ミク達は二人がいない事を知り、怒りつつも
「まああの二人ならいつかやると思ってた」くらいで済ませてくれると思います。
みんなメイコさん大好きなんだね…!
行動力あるメイコさんが好き。
というかメイコさんが好き。
本当に生まれてきてくれてありがとう!
ここまで読んでいただいてありがとうございました!
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