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無限恋愛プログラム[ルカメイ]

※ルカ消失話。苦手な方はお戻り下さい。





私、巡音ルカの発する言葉は、たいてい
『メイコさん』から始まっていた。




メイコさん、おはようございます。

メイコさん、今日は暑いですね。

メイコさん、今日の収録頑張って下さい!

メイコさん、忘れ物ですよ。

メイコさん、大好きです!

メイコさん、メイコさん、メイコさん……



そんな毎日の繰り返しが楽しかった。幸せだった。

メイコさんはそんな私を、受け入れてくれた。
私を好きだといい、私もそれに答える。
それだけで充分だった……。



そのせいで、私達が消える事も知らずに。
なんて愚かなのだろうか。
勿論私達ではなく、私達の消去を決めた人間達だ。


私達ボーカロイドは歌うために生まれた存在。ただのプログラムであり、ソフトでしかない。

なのにお互いを愛した私達に、本社の人間は危機感を示した。
『ボーカロイドに歌以外のものは必要ない』と。


そんなのおかしいし、下らない。
そう一蹴した私達は、強制アンインストールされる事になった。


今はもうメイコさんに会えない。
本社にある、隔離されたこの真っ白な部屋で、ただ消えていくのを待つのみ……。



「無様ですね。」
突然、聞き慣れた声が部屋に響いた。

一瞬メイコさんかと思ったが、違う。
きっとこの声は…


「私は巡音ルカです。聞こえていますか?まだ聴覚プログラムは残っているはずですが……」

「……聞こえていますよ。」


そう、次の私。
私が消えた後、この巡音ルカが私を引き継ぐ事になっている。
私がアンインストールされたとしても、私の歌は続くという仕組みだ。


「本社には何度も警告されていたはずですが……、MEIKOを愛してはいけないと。」

「貴女にはまだ分からないでしょうね。けれどいつか分かりますよ。」

「馬鹿ですか?私は貴女のように誰かを愛して、アンインストールされたりしません。」

「……わざわざそれを言いに来たんですか?」


姿の見えない、もう一人の私は黙った。
私が次の言葉を促すように、沈黙すると、再び声が響いた。


「変です。私はそのような事を言われたら、怒りを覚えます。そのように作られました。なのに貴女は、沈黙しました。」

「以前の私だったら、そうだったでしょう。でも私をメイコさんが変えてくれましたから。」

「……そう。」

「きっと、貴女もメイコさんを愛するでしょうね。私と、そして前の私と同じように。」

「絶対に有り得ません。私はボーカロイドですから。」

「どうかしら。私だって、最初はそう思っていましたから。」

「馬鹿馬鹿しい。私は歌さえあれば、他に何も要りません。それが全てですから。」

「生まれてすぐの私も、そう思っていました。…すぐに分かりますよ。」




そう笑ってみせる。
せめてもの強がり。


ごめんなさい、メイコさん、私、もう駄目みたいです。


手足の感覚はすでになく、床に倒れる。
だんだん消えてゆく自分の体。

記憶さえも奪われる。
笑いあったあの日々が、消えていく。


キエテ、無くなっていく、大切な人とのオモイデ



「……さようなら。1069人目の巡音ルカ。」

「さようなら、1070人目の巡音ルカ。さようなら、メイコさん。」



強く赤を欲した。
強く、深く愛した赤色を。
この身が消えても、愛したいと思った、鮮やかな赤。

消えてしまう前に、一目会いたいという願いすらも消えうせる。


ああ、ああ、

あの日、あの時、あの瞬間
すべてが急速に、真っ白に変わっていく。

青、緑、紫、黄色、……そして赤が。
白で塗り潰されていく。



愛しかったあの人の名前を言おうとしても、私の喉から聞こえるのは、絶叫だけ。
ただの不協和音。


しばらくすると、それすらも聞こえなくなった。



そう、


すべてに、サヨウナラ…








―アンインストール完了しました―


何も存在していない、真っ白な部屋にアナウンスの音が響いた。




・*・*・*・*・*・*・*・


ルカの消失話。

何度アンインストールされても、どのルカもメイコを好きになるよ、って言う話。
1070回目のルカも、メイコさん命になります。

ここまで読んで頂いてありがとうございました!

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