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試したいお年頃
◇2.
最近あの変態男が大人しいな、と今更ながら気づいた要は制裁をしていたチワワをジャイアントスイングしようとした手を中途半端に離した。



それのせいで唯一の取得である顔が雨でぬかるんだ地面に強打したが、チワワは腐っても男の娘。
見事泥だらけの顔を引き攣らせて風のように逃走した。



あいつ、体育で見た時よりも足が速くないか



「きゃ〜ん待って〜」とマラソンの時に見た内股走りを思いながら、パンパンと汚れた手を払った帝王は風邪をひく前に校内に入る。
ちなみに制裁されていた生徒は部下に任せているので心配はない。




「………あぁ、そうか。そういえば新迎が近いのか」




てっきりこの雨のせいかと思ったが、と要が言うには理由がある。



実はあの俺様会長、あぁ見えて偏頭痛持ちなのである。
普段は薬でどうにかしているが雨が降るともう薬なんて「無駄に長いヒーローの変身シーンを毎週毎週律儀に流す番組並に無駄」らしい。


2回も無駄を言う必要があったのか。そもそもお前見てたのか。俺の妹曰く、最近は変身シーンちょっとカットしてるらしいぞ。2割ぐらい。




さて、そんな要であるが蓮のことを少し見直した。

噂に聞くと毎年お馴染みの鬼ごっこをリゾート地で宝探しゲームに変更したらしい。それは要からしてもありがたい事だった。

毎年この行事で起こる制裁や喧嘩、強姦事件は歴代の風紀委員も手を焼いていたのである。
その点宝探しゲームならば内容はまだこちらまで出回ってはないが、比較的これまでよりも見回りが楽になるだろう。
グループ行動で組み分けさえ間違えなければ、多数というのは手が出しにくいものだ。




まぁそこまで蓮が考えていたかはさておき、結果としてはこちらは感謝する以外何もない。
今の今まで存在を忘れてしまうほど関わってこなかったのも、新しいイベントの為に身を粉にして頑張っていると思えば好感度も上がる。






「会長様大丈夫かしら…」

「凄く顔色悪かったよね」

「ちゃんと休息はとってるとは聞いてるけど…」

「「「心配だよね!!!」」」




要が校内を歩いていると空き教室からそんな声が聞こえた。大方、蓮の親衛隊だろう。
何も悪さをしなければ要は注意もしないが、今聞こえた言葉に自然と足を止めてしまう。




顔色が悪い…そんなに忙しいのか。




助けた恩を仇で返されたり、いきなりセフレにされたり、乳首を責めろなど無茶振りをされたり、ケツの穴を責められたりと色々されてきたにも関わらず聖人君子並の優しさを持つ要は心配してしまう。


第三者が知ったら全力で保護するか、感動で前が見えなくなるかの二択しかないだろう。



お見舞い、というのもおかしいが何かできないだろうか。と考えていた要の耳にまた親衛隊の声が聞こえる。





「疲れてるならやっぱりアロママッサージかしら?」

「あっそれいいかも!覇王様にマッサージ………あぁ〜別の所もマッサージしてあげた〜い!」

「も〜すぐエッチなことを考えるんだから!でも…最近誰も夜伽に誘ってないみたいだし、チャンスじゃないの?疲れもとれてスッキリして一石二鳥!」

「ちょっと!二人とも抜けがけはダメだからね!」

「むっ…わかってるわよ〜」

「そうそう、想像ぐらい良いじゃない」






その後、三人のチワワはすぐに別の話題に移ってしまいクスクスと笑って談笑する。


だから扉を挟んだ廊下で男が立っていたことを知らない。話を聞いていたことも知らない。







「あろままっさーじ…か」






勿論、そんな呟きも。


[少し休憩だ]

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あきゅろす。
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