夜月微笑み 桜は唄う
あぁ…彼は
「んと…じ、ぶん…で、言った方が、嬉し、い…ハハッそうだろ?」
_____ポンポン
彼はそう言って俺の頭を優しく撫でた。
それが気持ち良くて目を閉じて受け入れていたが、すぐにその温もりが離れていった。
……もっと、撫でて欲しかった
名残惜しげに彼の手を目で追っていれば、立ち上がった彼の視線と交わった。
「さて……"ユン"、今から夜食作るから手伝ってくれるか?」
初めて、名前呼んでくれた…
「!っ…!」
たったそれだけなのに、声をあげて泣きそうになったがそれ以上に早く返事を返したくて必死に口を動かす。
「て、つだう…ありがとな、んじゃ行くか」
よかった、伝わった!
伝わった事に安堵しながら、歩き出した彼の後に続いて歩いていると…ふと思った。
暖かい…彼の傍はどうして暖かいんだろ?
その暖かさは…光?いや、それよりも穏やかで
なら月?いや、そんな遠くなくて…
俺を
待つ訳でもなく
置いて行くのでもなく…
一緒に並んで歩いているような_______
____"ヒラ"
「!」
そうグルグルと自問自答していれば、視界に入ってきた"ソレ"にバッと窓の外を見た
そこには_______
「あぁ…
…綺麗な桜だな」
桜の花びらが空を舞っていた
_______あぁ、そうだ
彼は華なんだ
その華の中で一番似合うのが…桜だ
無意識に捕まえてみたいと思い、窓から手を伸ばして花びらを捕まえようとするがなかなか捕まらない。
すると隣に誰かが立ったと思えば、俺が頑張っても捕まえられなかった花びらを難なく指先で摘んで捕まえた。
あ、っと思って隣を見れば紫髪の彼はそっと捕まえた花びらを俺に差し出す。
「…ほらよ」
「ぁ…」
手を伸ばせば、届く
「…(ハクハク」
「ありがとう?ハハッ、どう致しまして
じゃあ行くか」
隣に居てもいい
_______コツ、コツ、コツ、コツ
_______タッ、タッ、タッ、タッ
急がず焦らず、ゆっくりと…
「____ん?何笑ってんだ?」
「…(フルフル」
「?そうか」
首傾げながら前を向く彼を見ていたが、体が勝手に目の前の裾を引っ張ってしまう。
怒るかな?と少し不安になるが、ん〜?とこっちを向く顔は全然不機嫌じゃなくて…
「ぁ、っ…(ハクハク」
「??何かよくわかんねぇけど…
どう致しまして、ユン」
そう言って、また2人で長い廊下を並んで歩き出した_______
『ありがとう_______』
______________彼の名前は
『_____ミコト』
______________大切な名前
ーユンSIDEendー
[眠る?」[唄う?」
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!