夜月微笑み 桜は唄う
腹の底から
彼はそれだけ告げると、俺に背を向け歩き出した。
ードクンッ
待って
ードクンッ
待ってよ…
ーコツコツコツコツ
「ま、……て、よ…」
静かな廊下だから、俺の声は響いているはずなのに聞こえてるはずなのに、彼の歩みは止まらない。
ードクンッ
『なんで"ヨン"は賢いのにお前は__』
待って
『ユン兄!僕また先生に褒められたよ!』
置いていかないで
耳鳴りが煩くてフラフラとする視界の中、彼に手を伸ばすが随分先に行ってしまった背中に届くわけがなく…。
ードクンッ
『なんで!?なんでユン兄が___』
違う、俺は、ただ…
頭が、胸が、痛くて痛くて…ついに膝から崩れ落ちて。
『ユン兄なんて___』
__彼が、角を曲がる
ードクンッ
「ッ待って!!!!」
俺は彼を見るのが怖くて、下を向きながらだけど…生まれて初めて大声をあげた……しかし
ー……コツコツコツ
あぁ…彼が行ってしまう……。
やはりデキソコナイには誰かに思いを伝える事はできないのか。
そう思ったら、視界がグニャリと歪んでヒリヒリと痛む喉がまるで自分を嘲笑っているようで。
「っ……ぅ"、う…」
ジワリと溢れ出た雫が零れようとした、その時
「ッ!?」
突然、目の前が真っ白になり驚くが涙を拭われたのだと理解し反射的に顔をあげると__
ーギュッ
優しく抱き締められた、誰に…となどすぐわかる。
だって…こんなに綺麗な紫の髪を持つ人を、俺は"一人しか"知らないのだから。
[眠る?」[唄う?」
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