夜月微笑み 桜は唄う
彼の言葉
「…?資料室なら、目の前にありますよ?」
彼のその言葉に首を傾げて、そろそろと前を見ると
「!あ、…た」
確かに目の前の扉には資料室と書いてあった。
「ぁ、えと……あ、りが……と」
「………いいえ、それより早く入られたらどうです?」
素っ気ない態度に少しビクッと肩を震わしてしまうが、ゆっくりと扉に向き合い恐る恐る開ける。
中に入ると少し薄暗く、何年も使われていなかったのか歩く度に埃が舞った。
く、さい……鼻、もげそう……
涙目になりながらもなんとか奥の棚まで行き、資料を探す。
「ぇ…と」
しかし、どこを探しても関係ないものばかりがでてくるだけでお目当ての物が出てこず肩を落としていると……にゅっと、突然自分じゃない腕が視界に映る。
「!?」
「_____これじゃないですか?」
そう言ったのはいつの間にいたのか先程の彼で、俺が驚いている間に埃まみれのその本を叩いて綺麗にすると渡してくれた。
見ると、確かに自分が探していたものだった。
「ぁ………あ、…りが…とぅ」
「いいえ」
そう言って、彼は踵を返したがピタッと急に立ち止まり振り返る。
金色の瞳が、俺を捉えた。
「……あなた、そんなに喋りたくないのなら、口を縫ったらどうです?」
「え__」
「そうすれば、誰もあなたに喋りかけませんし、喋らなくてすみますよ。」
ーキー…パタン…
それだけ告げると、彼は何事もなく部屋から出て行った。
それに俺はただ呆然と見つめるしかできなかった。
な、んで?
なんでわかったの?
なんで俺の気持ちわかったの?
なんで…、そんな事言うの…?
[眠る?」[唄う?」
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