夜月微笑み 桜は唄う はじまりの話 むかしむかし、あるところに 赤い髪に赤い瞳の'堕ち人'がいました。 堕ち人は怪我をしていて、それを見た一人の騎士が赤い人を城に連れて行き、手当てをしました。 堕ち人は恩返しにと、その城で働き始めました。 最初は堕ち人を嫌っていた王や兵士達でしたが、堕ち人の頑張っている姿に何より、優しい心にすぐ仲良くなりました。 その堕ち人が現れてから、この世界は大きく変わりました。 長い間争っていた猫の国と狼の国が和解して同盟を結んだり、動物と獣人の共存もできるようになりました。 皆、この世界に平和をもたらしてくれた堕ち人が大好きでした。 しかし…平和は長く続きませんでした。 突如現れた、黒い塊が獣人達を襲い始めたからです。 黒い塊はとても強くて、皆次々と殺されていきました。 生きとし生けるもの達が絶望する中、 一人の魔法使いが現れて堕ち人に言いました。 「あなたの命と引き換えに、この世界を助けてあげようか?」 皆が反対する中、堕ち人は静かに頷き魔法使いに笑って礼を言いました。 自分が死んでしまうにもかかわらず… 数日後、大きな桜木の下で儀式は始まりました。 ーごめんなさい ーごめんなさい ーあなたを見捨てて私達がのうのうと生きてごめんなさい 泣いて謝る獣人達に、堕ち人は力強く言いました。 「約束する!100年後、またこの地に降り立つと! だから… 笑ってください、生きてください その命尽きるまで」 そう笑うと、堕ち人は淡い光に包まれて…消えていきました… その後、黒い塊は消え去り、世界に平和が戻りました。 獣人達は自分達を救ってくれた堕ち人を '光の姫'と名付け、皆で崇めましたとさ… [戻る] |