企画小説
3
「………失敗だったな」

「なにが?」

「臨也の手と足、つけたままにしとけばよかった」

「………」

「手繋ぐこともできねぇ、抱き締めてくれることもなくなった、足も触れな、」

「だから俺言ったじゃん、俺はいいけど、シズちゃんはあとで絶対後悔するよって」

少し怒ったように言う臨也に、申し訳なくなる。確かに俺のわがままで、臨也の手足はなくなった。

「けどよ、臨也が他の奴に触るから、」

「シズちゃんだって俺以外のひとに触るじゃん」

「………部屋から出るなっていったのに、この部屋から出てたから、」

「後ろから、わっ!って、ちょっとおどかしてやろうって思っただけだもん」

「………臨也は、手足あったほうが良かったか?」

「そりゃあ、ね。けど、シズちゃんはずっと俺のこと好きでいてくれるんでしょ?」

だから、いいよ。
そう言って笑った臨也を、潰れるほどに抱き締めた。ああ、勢いに任せて臨也の口を縫ってしまわなくて良かった、目をくり抜かなくて良かった、耳を落としてしまわなくて良かった、首を落としてしまわなくて良かった。だから今、こんなに幸せでいられるのだ。

けれど、未だに悔やまれるのは臨也に結婚指輪という永遠を誓う形を贈れないことだった。臨也にそう言えば、形なんてどうでもいいよ、と言われた。それに、もう形はあるだろ、と視線を落とした臨也の後を追えば、そこには膨れた腹が、こどもがいる。…ああ、幸せだ、俺たちはなんて幸せなんだろう。





「何時も暗いとこに閉じ込めて悪いな」

「別に、暗い方がいいし、狭くもないし痛くもないから平気。早く、遅れるよ」

「ああ。こども生まれそうになったらすぐ教えろよ」

「わかってる、その時はなんとかして教えるから、うまく周りのひとごまかしてよね」

ドアを開け、日の光を浴びる。

がらがらがら。

スーツケースが音を立てた。








身の程知らずの人魚姫
とけて、くずれて、いなくなる









素敵サイトの管理人様、西原お茶様主催のプラタナスの木漏れ日にに提出させていただきました!

こんな小説を提出してしまいすみません…
土下座しなければならないレベルなものですが、読んでいただいてありがとうございました…!

そして西原お茶様、素敵企画に参加させていただき、ありがとうございました!

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あきゅろす。
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