R&C-薔薇と冠-
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―ああ、だめ。
だめだよ、おもいだしては、だめ。―
わからないわかりたくないおもいだしてはいけない。
「いや、言えない、思い出しちゃいけないから、思い出すと怖いものがくるから、わたしは、わたしを、知らないの、わたしは、」
必死で言葉を紡ぐ。
おもいだしてはいけないわかってはいけない。
ああ、痛い、頭が、でも、思い出すともっと痛いのだとわたしは『思い出して』いる。
「言えない言いたくない思い出せないわからない」
「そう、」
少女の嘆息のようなものが聞こえてわたしは顔を上げた。
気付けばわたしは両目から涙を垂れ流して突っ伏していた。
頭が割れるように痛い。
体中がじくじくと痛む。
しかし、少女は先程とは違い穏やかな微笑みを浮かべていた。
「かわいそうに。記憶喪失なのですね。大丈夫ですよ、私たちは貴女を傷付けるものではありませんから」
そう言ってわたしの涙を拭うその指が嫌だと思った。
このこは なにを わらうの か 。
The next rose blooms…
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