R&C-薔薇と冠-
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とにかく、まくし立てられたことに頷くことしか出来なかった。
一呼吸おいて、色々考えてみる。
わたしはどうやら怪我をしたみたいで、この子が治してくれたみたいだった。
それから、この子はけいしゅんこうというちょっと難しい名前で、ここはとても広くて、迷うと大変で、それから、聞きたいこと、は、ここは。
「わたし、どうしたの…?」
ぽつりと呟いてから、これが一番聞きたかったのだと妙に納得する。
いまはいつで、わたしはなにで、ここはどこで。
それよりも、わたしはどうして。
体を捩ると、重たく鈍い痛みが響く。
女の子は、少し間を置いてから口を開いた。
「…1度熱傷。重い傷ではありませんが、ほぼ全身に渡るので軽い傷ではありません」
「違う。だから、なんで」
「………」
答えがまだるっこしくて、思わず強い調子で聞き返してしまった。
春羹は難しそうな顔でわたしを見つめて押し黙ってしまう。
「あなた…名前は?」
「へ…?」
「ご自分の名前を覚えていますか?」
逆に問われてしまった。
急のことにわたしはぽかんとする。
わたしの名前。
名前。
この子はけいしゅんこうという名前があって、花にもそれぞれ種類や名前があって。
なら、わたしの名前は?
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