R&C-薔薇と冠-
・
ああ、でも──シシア、そうだ、シシアはどこだろう。
弾かれたように辺りを見回す。
いなかった。
どうして気付かなかったのだろう。
いつからだっただろう。
シシアが、いつもわたしの側にいてくれたシシアが、今はいない。
心臓が突然痛い程に暴れ出して、汗が噴き出した。
わたしの中の靄はもう消え失せていた。
どうしよう。ダメだ。怖い。
シシアがいないと、また。また。また、
「し、シシアが、わたし、シシアがいないと、いてくれないと、わたし、わた、し、」
「うわっ!えっ!?なな何で泣くの!?俺何か悪いことっ」
「待って!!アドリュード、触らないで。その子…」
体が酷く重くなって、腰から砕け落ちた。
固い石畳が、わたしを嫌そうに受け止める。
← →
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!