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R&C-薔薇と冠-

立ち尽くしていた。

固い石畳の道路の上で、わたしはただ立ち尽くしているしかなかった。


わからなかった。

何故ここにいるのかがハッキリしない。

わたしの「隙間」から湿り気が侵入し、体中が靄に侵略されているからだ。

心も体も虫食い穴がそこかしこにあるのだ。

侵されつくして、わたしこそが靄同然の、朧気なものになっている。


霞んだ心の中には何もない。

フィルター越しの頭の中にも、誰も、いない。



いや、うっすらと見いだせるのは、仰々しいゴーグル。わたしを撫でてくれる分厚い手袋。優しい、息。

それから、柔らかな黒髪。

それから、見える、赤い──いや、『紅い』、炎。


あとは見えない。

何も見えない。

なにひとつ、見たくない──。







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あきゅろす。
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