チルチルとミチル(完)
い
『…なんだよ、これ』
開ける瞬間まで何も臭わなかったそこ。
今は、噎せ返るほどの…血の臭い。
慌てて一番臭いの濃い奥に走る。
誰か怪我してんのかもしれねぇ…いや、せめて怪我であってくれ。
明かりを灯して明るくなったキッチンで血を流して倒れてるのは、サッチさんと…あれは、俺?
俺?
じゃあここにいる俺は、誰だ。
慌ててキッチンから外に飛び出す。
どうして。俺は誰なんだ…ここは、なんで。あんな…?
朝だった筈の空は真っ黒。
まるでセルティみてぇな。
闇。
『…ぁ』
「やっと、目覚めようとしたか」
『誰だ!』
「こうすれば…分かるか?」
空の一部が固まったかと思えば霧が晴れるみてぇに黄色が見えた。
この世界には俺と同じくらい…いや、元の世界でも浮いてたが構わねぇ。
池袋で知らないヤツはいねぇぐらい有名な。
ここには居ないはずの…俺の親友。
『!…セル、ティ?』
「それはお前の世界の私の名前…だが私もあれと同じもの」
『……』
「ごちゃごちゃ考えるな、いいから思い出せ」
誰も居ない船内の甲板に立つ…親友と同じ者。
違うのは、声が聞こえること。
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