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チルチルとミチル(完)


目覚めた男は直ぐに寝ちまった。

予定よりも一日早い目覚めに、もしかしてと頭を覆っていた包帯を取れば…傷は跡形もなかった。


それから一日、いつもよりも早く目覚めて男を見張るために部屋へと向かう。

朝飯が終わったらあの男に電話をしなければ…。

着水式は昨日無事に終わったが仕事が無くなる訳でもない…特に必要な書類作成なんて探さなくてもデスク一杯に積み上がっていたのだから…いや、勿論サボっていた訳じゃない。

ンマー、市長と社長は何かと書類が付き物だということだな。

暫くは外に出ないようにスケジュールを組み直し、書類制作を終わらせていく。不意に衣擦れの音がしてベッドに目をやれば、予想よりも鋭い目線…。



『このハンバーグ旨いッスね』

「水水肉は柔らかさが違うだろ?」

『ふわふわしてるッス!』

「ンマー…コックが喜ぶな…」



三日めで既に人気者になっているシズオ…本人は無自覚だが。

ふにゃふにゃの笑顔で旨かったと言われればコックでもないのに、いや…俺が嬉しがってどうするんだ。


頭の中でどうしても重ならない、好戦的な目線と食事を前にする今のシズオ。

今思えば怪しんでいただけなんだろう。

俺も本能が危険だと訴えてきていたのか、みっともなく取り乱しちまったし。

飯を旨そうに食っている餓鬼みてぇな顔からは、あの睨みつけるような鋭い表情を思いつけねぇ。




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