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チルチルとミチル(完)
Night of a star and a firefly.


sideージョズー


シズオは優しいと思う。

最初から俺はシズオが気に入っていた。

強面の俺にも変わらない笑顔を向けてくれた。

シズオ自体が強いからなのか俺に触れるのも躊躇わなかったし。


彼は誰にでも優しい。

それはシズオにも優しくしてるからってのもあるだろうが。

俺はそれを美徳だと思う。



『祭り、行かねぇの?』



浴衣を着たシズオがこちらを見上げてくる。

ある小さな島の祭りの時期と停泊が丁度重なった。


見張りとは別に参加しない者もいる。

俺たちの中の何人かは人混みが嫌いだったり、種族的な問題で祭りには行けなかったり。

かく言う俺も、自分の巨体が邪魔になることは分かっている。



『ふーん…』

「シズオは…もう行ってきたのか?」

『おう』



今のシズオはまるで子供のようだ。

リンゴ飴をかじり頭には狐の面を結んで…聞けば浴衣はイゾウに、リンゴ飴はマルコ。

狐の面はビスタに貰ったそうだ。


あまりの可愛がりっぷりに自分は今回なにもやってやれなかったなと…少しだけ落胆する。



『なぁ、今日の見張りってジョズたちだろ?』

「あぁ…俺たちのところは今回行かないのが多かったからな…」

『…して欲しいことあんだけど』



俺にとってはシズオからの初めてのお願いだ。

聞かない訳がない。

いつも頑張ってくれている彼のためならなんでも聞いてやろうと頷いた。

真夜中、俺はシズオの小さな願い事を叶える。



「グララララ!…こりゃあすげぇ!」

「こんな時間に起こされて、なにかと思ったがよい…」

「何だって叶っちゃいそう!」

「肉肉肉ーっ!!」

「ありがとうよい、ジョズ」

「…いや…シズオなんだ、皆を起こしてくれって…」



俺は起きられなさそうだから、始まったら皆を起こしてくれと言われた。

酔っぱらいから助け出した老人から、この流星群の話を聞いたそうだ。

ただの流星群じゃない…ここの森だけに咲く花はこの流れ星に呼応して光る…今も、島の至る所で光を放っている。

それが水面にも映って、何とも言いようがない程綺麗だった。

少しだけ島から離れる、船からでしか見られない光景。



「蛍のようだねぇ…」

「ホタル?」

「そうさ、愛し愛される為だけに輝く…情熱的で儚い虫…」



部屋で夢の中なんだろう、優しい彼に感謝する。


Night of a star and a firefly.
(星と蛍の夜)
We have been gently embraced in you.
(私達は君に優しく抱かれた)


俺たちは…最後の一筋が消えるまで、彼のことを想い空を見上げていた。

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あきゅろす。
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