チルチルとミチル(完)
い
side-アイスバーグ-
いつものように一番ドックでの仕事を見回り、カリファの伝える予定をこなしていた俺の元に部下が走ってきた。
仕事帰りに橋の上から落ちた血だらけの男がいる、と。
取りあえず助けたはいいが医者が近くにいるわけじゃねぇし、どうしたらいいか分からないから俺に指示を仰ぎにきたらしい。
ンマー…取りあえず。
「カリファ…」
「はい、午後の予定は全てキャンセルします」
「それと医者を…」
「手配済みです」
「ンマー…流石だなカリファ!」
「恐れ入ります」
ウォーターセブンで見たことがねぇ男なら…旅人か、海賊か海軍か。
まぁ、どちらにしろ見捨てて置くわけにもいかねぇ…それにココなら大丈夫だろう。
金髪の男が二人の社員に肩を担がれ一番ドックに現れる。
ここでは珍しくもねぇ濡れた金の髪…寒さからか血が足りてないからか、病的に白い肌。
一瞬、時間が止まったように思えた。
気づけば俺ぁ客室のベッドに着替えさせた男を寝かしその横で椅子に座っていた。
待っていた医者が頭の傷を見て何針か縫うと言っている…が、手当が始まってから異変が起きた。
縫い針が…通らねぇ。
人間の肌でそんな事が起きるわけがない…俺は目を疑った…目の前で、傷に薄い膜が張った。
血はもう出ていない…逃げ帰った医者の代わりに包帯とガーゼで応急処置を施す。
能力者、か。
かの白ひげ海賊団、一番隊隊長不死鳥のマルコは…どんな攻撃を受けようとも青い炎に包まれて再生すると聞いた。
本人から。
俺たちは呑み友達ってやつだからな。
再生してる所は見たことねぇが…不死鳥の姿は、なんとも言えねぇぐらい綺麗だ。
数日前に、何年かぶりに姿を見せた男のことを思い出す。
なにかの実を食べたが能力が使いこなせず川に落ちた…まぁ、ありえねぇことじゃねぇ。
急いで海楼石を編み込んだシーツを取り寄せさせてその上に寝かせる。
ンマー…結局、意味はなかったがな。
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