チルチルとミチル(完)
し
何であんな裏町の橋から落ちたんだ?っつー話になって。
トムさんと池袋で取り立ての仕事を終わらせてから、喧嘩して気絶したと正直に話した。
ら、いきなり胸ぐらを掴まれた。
怒りよりも先によく分からないことで怒鳴ってくる、市長さんに俺は混乱させられた。
トムさんはずっと前に死んでるとか…船大工とか…池袋がグランドラインのどこなのかとか、どこの海なんだとか…。
お互い混乱して、よく分からなくて。
先に我に返った市長さんが俺に謝って、何時間も話をした…っつーか、俺は質問に答えただけだったけどな。
住んでた場所を聞かれて地図に書いてみて、変な地図を見せられてどこだと聞かれても俺には分かんねぇ。
ペンとかは、なんか映画で見たような羽ペンとかしかねぇし…何よりも違ったのが、言葉と文字。
英語は高校生の時以来だしその他の国の言葉も知らないから断言はできねぇけど…多分、文字は英語。
でも話しているのは日本語。
俺の名前を聞いて変な顔したのは、俺を知ってた訳じゃなく…どっちが名前なんだか分からなかったから。
ついでに言うとお金も見たことのないものだった。
トムさんも、俺の世界のトムさんとここのトムさんは違うってことも分かった。
「ンマー…いきなり掴みかかってすなまかったな…」
『いや…仕方ねぇっすよ…市長さん』
俺たちが現状を理解するのに二日かかった。
んで、俺がここでの常識を覚えるのに丸三日かかった…こんな見ず知らずの俺にこれだけ親切にしてくれた人。
今俺はまだ混乱してる。
なんで違う世界にいるんだろうとか、帰れるんだろうかとか…早くここで自立しなきゃいけねぇって。
新しい世界。
俺の暴力を…平和島静雄を、知らない世界。
「おい。静雄…飯行くぞ…」
『うっす、市長さん』
「…なぁ何が食べたい?俺ぁなぁ…」
帰るまで少しだけは休んでもいいだろうか。
暴力を隠して生きていっても構わねぇだろうか…どうか、どうか。このゆったりとした時間を…もう少し。
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