チルチルとミチル(完)
な
だが上手く使いこなせてねぇ。
違う世界とやらじゃ存在自体もなかった代物…。
上等じゃあねぇか。
『いや、結構思いっきり掴んじまったから…ッス』
初めて俺がアイツを手で掬い上げたとき、まだ敵か味方かわからねぇ俺の心配なんかしやがって。
俺の手の中で小さくなりやがって。
全部壊しちまえる力ぁもってやがるくせにそれで大事なもん傷つちまうって怯えてるガキ。
愛おしくて仕方ねぇじゃねぇか。
まるで昔のお前を見てるみてぇだなぁ、マルコ。
頑張り過ぎんだてめぇらは。
何の為に俺がこんなにでかい体してると思ってやがる…ちっせぇてめぇらが全力で抱きしめてきたってびくともしねぇぞ俺ぁ。
『親父…』
「あぁ?なんだぁ、シズオ」
『抱きついて、かまわねぇか?』
歓迎の宴で飲まされたんだろう…俺がやった小遣いを律儀に返してきやがった可愛いが甘え下手な末息子。
修理してもらったモビーの上で改めて全員が集まっての宴。
相変わらずいい腕だ。
うつらうつら船漕いでやがるのを気付ねぇ程、奪い合いに夢中になってやがる。
俺は寝ちまったシズオを腕に抱えて俺の部屋のベッドに寝かせる。
途中で目ぇ擦りながら寝ぼけてんだろうな、痛くしねぇから抱きついてもいいか…なんて。
遠慮がちに体に腕を回してきたシズオはそのまま寝ちまった。
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