チルチルとミチル(完)
こ
『親父にいくら借りたんだかまだ聞いてねぇ…っつーか聞くの怖ぇ』
「まだそんなこと気にしてんのかよい?」
『服の分はアレで足りたんだろ?』
「素直に甘やかされとけってのに、律儀だねぇ…」
「なになに?サッチさん着いていけないっ!」
俺は数日間のことを話す。
周りにいた二人も俺の説明不足な所をちゃんと言ってくれて、サッチさんにも上手く伝わったみてぇだ。
色んなとこ回るもんだから結局皆それぞれ一日中連れ回しちまってたな。
買い物に五日間…時間かけすぎたか。
買ってやると言ってくれたのは嬉しかったがけど、どうしても申し訳なく思って全部借りてるってことで大体の値段を全員分メモしてたこと。
俺頭悪いから暗算とかできねぇけど、あることがあってお金ができたのをマルコが見てお釣りがくるよいって言ってたから返した。
分厚い札束が六つ。
皆俺が返しに行ったら受け取ってくれなかったから仕方なくマルコに渡したことも。
マルコが上手く返してくれたみてぇで確認しに行ったら、しかたねぇなぁって頭撫でられた。
この世界って、皆頭撫でんの好きなんだな。
「あぁ、そうだ…アレ、ちょっとあまったからシズオに返すよい」
『あー…親父の何かに使えないか?』
「なんか、って?」
「酒買ってやりゃあ喜ぶんじゃねぇか?」
『…そうッスかね…?』
分かる。トムさんも社長さんもそういう人だ。
「俺たちはお前を甘やかしたいんだ」っつーのがいつもの言葉で。
俺が社長に迷惑かけちまってその修理費渡そうとしても絶対に受け取ってくれねぇ。
トムさんに怪我させちまったときだってケジメだって渡した治療費以外の慰謝料的なお金は俺との飲み代に使って…結局俺は奢ってもらっちまったし。
親父も、そういう人なんだと…マルコさんの話から分かっただけだけどな。
『喜ぶか?』
「親父が息子からの送りもんに喜ばない筈ないだろう?ねぇ、そうだろう、マルコ」
「あぁ、イゾウの言う通りだよい」
『…ん』
さんきゅっと言えば俯く二人。
?…あぁ、頷いてん…のか?あれは。
「マルコ…(なにアレ、はにかみ顔可愛いんだけど!サッチさんドキドキしちゃったんだけど!)」
「…よい(正直お前の言いたいことわかんねぇが、シズオが可愛いって言いたいのはなんとなく分かってるよい…っつーか、俺が言いてぇよい)」
何故か爆笑してるイゾウさんと見つめ合ってるマルコさんとサッチさん。
さっきからどうしたんだろう、この二人は。
視線を感じて振り返る。
親父の周りにいる誰かが見てたんだろ…俺は気にせず体を元に戻した。
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