チルチルとミチル(完)
か
のに。
やっぱりアイツは疫病神だ。
ぁあ”あぁあああ”っ!!
今思い出してもメキッと殺したくなる、アノのみ虫野郎…!
今日は珍しく順調だったんだ…寝坊は兎も角、暴力から遠ざかって我慢できてるっつー実感が持ててたのに…!
トムさんと分かれてから俺は、社長に貰った金で目覚まし時計を買いに行こうと公園を横切った。
折角だから余った金に上乗せして、日頃のお礼にトムさんと社長にネクタイでも買おうかと考えてた時…不意に投げつけられた殺気。
鼻を掠めたのみ虫の臭い。
反射的に振り向けば正面からバットで頭を殴られた。
フルスイングに思わずフラついて、やっと顔を上げて囲まれたのに気づく。
鉄バットで俺を殴った野郎がリーダーなのか一斉に俺を袋叩きにしてやれと叫ぶ男。
あぁ、今日はいい気分だったのによ。
慣れた感覚がする。
ぐわっと頭に血が上って全身が沸騰してるみてぇに熱くなって、俺の言うことを聞いてくれなくなる…この瞬間。
後は、投げ飛ばして殴り飛ばして蹴り上げてぶん殴った。
のみ虫を片づけるのは…この無駄に多いヤツラを全部ぶっ潰してからだ。
ッチ…目が霞む。
最初の一撃でできた傷から出る血が止まらねぇ…足に力が入らなくなってじんっと脳髄に痺れを感じ、後ろによろめいた。
貧血、だ。
何かに踵がぶつかって本格的に後ろに倒れる…ヤバい、ここは。
頭で考えるよりも先にバシャンッと水の中に落ちる感覚…。
あ?
ここの噴水…こんなに深かったっけ。
あぁ…それにしても、水が…光が。すげぇ綺麗だ。
俺の方に伸びる手と…水の中に家が建ってるのを見た気がしたのを最後に、俺は意識を手放した。
冷たい筈の水の中は…なんか優しく感じた。
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