チルチルとミチル(完)
ぶ
sideーサッチー
どうやら丸く収まりそうで良かった。
親父が探索に向かわなくてヤキモキしてたのは俺も一緒だったからさ。
いやー…末っ子様々ってね。
俺たちの可愛い方の末っ子はもう何度も浚われてるから心配だよ、マルコなんか目の前で浚われたから必死になっちゃって。
ま、思ってたよりもややこしいことになってるみたいだな。
ティーチが出てきた時点で嫌な予感しかしなかったから今更なんだけど。
しかし、破壊人形か…。
「どうしたんだよい、サッチ」
「んー?」
「眉間にしわ寄ってるぞ」
「俺が考えてたよりすっげー面倒なことになってそうだなぁ、と」
楽観視し過ぎてた。
そりゃあもう、子供の可愛い家出くらいのお手軽さでしか考えてなかった。
シズオはきっと俺が知ってる内で最も厄介な相手に捕まってると予測している。
七武海、ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
人を操るその能力はあの中でわりと扱い辛い…その気になれば世界すら操れるだろうその糸から逃げ出すのは簡単じゃない。
実際、ジョズがその餌食になったから言えることだけど。
俺は皆の集まっていた会議室から出て自室へ向かう。
破壊人形の情報は少ない…でも。
政府に都合の悪いやつらのいる建物や革命軍の壊滅事件は隠しようがない。
人が傷つけば、それを恨む人間が情報の発信源になってくれるからな。
それを、追っていけばいい。
楽なもんだ。
サッチさんには優秀な部下も沢山いるしね。
ドアを閉めてため息を一つ。
イスに座って秘蔵の酒を瓶から煽る。
あることが得意な部下の送ってきた現場の写真を見る限りでは分からなかったことも、時が経つにつれて隠しきれない部分も出てくる。
破壊人形の後ろ姿、すぐに分かった。
これはシズオだ。
マルコと親父にしか見せてないそれを引き出しから取り出して見つめる。
黒と赤と赤と金。
白黒である筈のそれははっきりと色を纏って俺の脳内に染み着いてる…これを見たときの俺の衝撃は、言葉にできやしない。
だから。
闇で見失い牢に閉じこめられた操り人形を取り戻せるまで、俺は俺を許さない。
皆の前では抑えてた怒りを拳を握りしめて耐える。
自慢じゃないが、俺は気が長くない方なんだよ。
意外だと思うだろう?
あぁ、もう自分が許せねぇ。
一瞬でも…ティーチに恐怖を感じて届かなかった手で、もしもシズオが傷ついていたら?
あの優しい子が、俺たちの弱さに絶望を感じていたら?
守られるよりも前線に立って吼える男だと分かってる、けどな!
気づけば俺は、気を落ち着かせるために飲んでいた筈の酒瓶を手で割り床に落としていた。
「どうして、俺は手を取れなかった…!」
確かに俺たちに向けられて伸ばされていた手を、どうして取ってやれなかったんだ。
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