チルチルとミチル(完)
を
sideーマルコー
「どうしてだよい!」
「まぁ、落ち着けマルコ…」
「親父!!」
シズオが浚われた。
夜に溶けるみてぇに消えちまったシズオを連れ去ったティーチを追うことにも失敗した俺たちは、直ぐに情報を集めた。
傘下たちに協力してもらいながら黒ひげの行く先をどうにか突き止めれば、そこは因縁の海軍本部。
まだ傷の癒えてねぇ俺たちも傘下の野郎共も、直ぐに戦の準備をした。
でも、親父からいつまで経っても突撃の声が上がらねぇ。
どうしたんだよい。
俺たちは親父がシズオを助けにいくって言葉を待ってんのによい。
俺たちは親父の部屋に押し掛けた。
「分かってんだろう。マルコ」
「!…っ親父!」
「それを皆に話すために集めたんだよなぁ…?」
「何のことだよ?」
エースの疑問に口に出して良いものだろうかと、戸惑う。
そうだ。
俺は話したくないからこそ親父の一言を待っていた。
親父には、気づかれてたんだねぃ…きっとサッチの野郎にも。
役目と私情…俺の体は一つなのに心は真っ二つに別れちまってる。
俺は知ってた。
シズオが町の人間に海賊だと怖がられると、少しだけ…悲しげな顔をすること。
拳を握りしめて目を合わせないように少しだけ俯く。
甲板で雑魚寝したときに偶然見た。
掌にある真新しい爪痕。
俺は見て見ぬ振りをしてたんだよい。
それを思い出して俺は机についていた手を握りしめた…皮膚が切れて再生の青が燃える。
俺たちを家族だと思ってること、裏切られるのを怖いと思うくらいに大切だと思ってくれてる。
でも、本当は辛いはずだった。
胸張って海賊だ書金首だと言ってそれなりの誇りも覚悟もあるだろう…でも、無条件に恨まれたり負の感情を向けられることにはいつまでたっても慣れないようだった。
けどよい。
俺は怖かったんだよい。
辛いか。
もしそれを聞いて、海賊を止めたいこの船を下りたいって言われたら?
寂しいか。
それを聞いて元の世界に帰りたいと言われたら?
だから陸に戻ってく船員を見送るシズオの顔が俺にはどうしても見られなかった。
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