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手を繋ぐ。(スク♀ベル)

やっと補習から解放された頃には、
窓から見える景色は真っ黒。

流石にもう待ってはいないだろう…

なにしろ久しぶりに本気の喧嘩をして、
挙句解決などしないまま今に至っている。

彼奴の性格上許したとも思えないし、
とっくに帰っているだろう。

それでもソレが習慣になった所為か、
頭に反して足は勝手に動く。

気づいたときにはもう、
教室の前まで来てしまっていた。


今日に限って閉められている扉からは、
自分の心情に似た冷たさと重さ。

ゆっくりと扉を開ければ、
古い教室の扉はギィと音を発てた。


中は思っていたより真っ暗で、
やっぱり居ないかと帰ろうとした時…



「…っ、ん………」



微かに聞こえた聞き覚えのある声。

暗闇に慣れてきた目でよく見れば、
机に伏せた小さな体が上下している。

近寄ってみると思った通り、
腕を組んで突っ伏したベルが寝ていた。



「おい、ベル…」


「…」



何度か声を掛けても
ピクリとも動かない細い体。

余程待ち疲れてしまったのか、
文字通り死んだように寝ている。


ベルの少しだけ見える目元に、
頬を伝う透明な跡を見つけてしまう。

長く伸ばされた前髪を掻き上げ、
赤く腫れた瞼を親指で撫でると
氷のように冷たい肌。

こんなとこで何時間も寝てれば、
当たり前の結果だろうに…



「ったく、馬鹿かぁ?しかも、何で泣いてんだぁ、お前は…」


「……………お前の所為だから」


「…起きてたのか?」


「今、お前に起こされたんだよ…ってか、気安く触んな、バカ鮫」



そう言って、険しい顔で手を振り払う。


じゃあ、なんで待ってんだよ

つくづく、分かんねぇ奴…



「…帰るぞぉ」


「勝手にすれば…」


「………そうかよ、じゃあなぁ」


「…ぁ、…っ………」



俺だって人間だ。

そんな風に言われればムカついて、
帰ろうと、ベルに背を向けた。

それに焦るような声を上げて、
制服の裾が引かれる。

振り返ると気不味そうに俯いたまま、
金髪の隙間から赤くなった耳が見える。

分かりやすい態度に怒りなんて消えて、
愛しくて冷たい体を抱き寄せる。

お前が素直に謝れない事くらい、
分かってたはずなのに…



「悪かったなぁ、ベル」


「…俺も、ごめん」


「ああ、仲直りだなぁ」


「ししし。何それ?ダサっ!」



さも可笑しそうに声を上げて、
長い裾で口を押さえて笑う。

苦笑いを洩らし隣の席に腰掛けると、
猫みたいにスルリと膝に股がるベル。

何気無く触れたスカートから曝された脚は、
冷気の所為で異常な白さと温度。



「冷てぇ…」


「ん?何が?」


「こんな馬鹿みたいに短けぇスカート履いてるから、氷みたいになっちまうんだよ、ったく…」



絡められた華奢な足に誘われて、
晒されて可哀想な太股をゆるりと撫でる。



「ちょっ!?…触んないでよ!」


「何でだぁ、ケチ」


「バカっ!帰るよ!!」



照れたように慌てて立ち上がると
帰り支度を始めるベル。

寒いのは嫌いだからと、
マフラーもコートも着けている。

なのに、細っこい脚だけは、
やはり丸出し。


矛盾だよな…



「よし。じゃ、帰ろ?」


「おう」



そう言って何気無く差し出された右手。


握るとソコだけは暖かかった










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あきゅろす。
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