[携帯モード] [URL送信]

log
Buon Compleanno Belphegor 09'


今日は先輩の誕生日だとか何かで、
アジトは何時も以上に生温い。

普段から甘やかされているだけあって、
ご馳走やらドルチェやら貢ぎ物やら…
先輩の周りはモノで溢れていた。

それでも何が物足りないのか、
笑顔がどこかぎこちなく終いには溜息。

暫くして取り囲む人が居なくなってから
ゆっくりと足を動かして、好奇心。



「先輩、誕生日おめでとうございます」


「ん、」


「ってか、ベル先輩に誕生日なんてあったんですねー」


「なんだよそれ?」



ケラケラと笑う先輩は、
素手でケーキを掴むと口に運ぶ。

とても王子とは思えないが、
この人の奇行にはもう既に日常風景。

嬉々としてクリームを舐める先輩の隣、
腰掛け削られていくケーキを眺める。

少しずつ崩れていくそれ、



「寂しいんですか?」


「何が?」


「隊長、帰ってくるの明日ですもんねー、先輩寂しいんでしょー?」


「…はっ、違うね!」



そう言った瞬間、

ぼとりっと真っ赤な苺が、
細い指をすり抜けテーブルに落ちる。

それを目で追ってから舌打ちし、
ナイフを取り出して無惨に苺を貫く。

テーブルと食器が音を立てて揺れても、
賑わいだ周りの人間は気付かない。

先輩の口元が歪む、



「もうお前死刑、ってか自害しろ目の前で早く3秒以内に」


「無理ですー、図星だからって八つ当たりはよくないですよー先輩?」


「うるさい、…」



テーブルの足を一度だけ蹴ると、
持ち上げた両脚に顔を埋めてしまう。


まるで飼い主に捨てられたネコ、
(別に捨てられてはないが…)

そんな風になるくらいなら、
行くなと先に言えばよかったのに。

何時もこの人は肝心な時に限って、
得意の我が儘を引っ込めてしまう

…少なくとも自分にはそう見えた。



「隊長に電話したらどうです?」


「やだよ、なんか負けたみたいじゃん」


「変なプライドですねー」


「…」



これ以上なにか言っても、
特に返事も返ってこなさそうだ…

そう思った、瞬間、

唯でさえ煩いと思ったこの場に、
一段と大きな声が騒音を掻き消す。

銀色の髪が視界の端に入った、
と同時に金髪が視界から消えていく。

その後の展開は目に見えていたし、
わざわざ振り返る気にもならなかった。



心無い罵倒の嵐のあと、
きっと幸せそうに笑うのだろう。




Buon Compleanno Belphegor
(2009/12/22)







滑り込みセーフですかね?←
今年はスクベル←フラで書いてみました。
若干切ないですけど、これはこれで…
後悔はしてない(笑)
来年もお祝い出来たらいいです。




[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!