想像と現実の違い
生まれて初めてのデートで、彼女と初めて手をつないで、隣にいるのが好きな人で。
確かに朝からテンションが高くて、ちょっとひかれるかもしれないと思ったけど。
クールなところがかっこいいと告白されて、それは一体誰だって思ったけど。
けど、だけどさ。
「なんかイメージと違うんだよね」
別れよ、と帰り道に一言。
付き合おう、とメールで言われてから一週間で関係は終了。
わかってる、いつもこうだから。
いつも付き合った後に、イメージと違う、とフラれ続けてきた。
それでも今回はデートまで行けたから、きっと俺のことをわかってくれていると思ってたのに。
隣を見ず知らずのサラリーマンと、キャピキャピした女子大生に挟まれ、俺の気分は群青色くらいになる。
きっと冴えない顔してるんだろうな、と客観的に考えるも、直す気はない。
どうせ、本当の自分なんて見てもらえないんだから。
初対面の人と話すのが苦手で、自然と喋らないでいるとクールだと勝手に思われる。
でも、気を許した人ならペラペラと多言になるから、面白いやつだって思われる。
気配りができて、何でも頼める優しい人だって言われる。
断りきれないか誰もやらないから、仕方なく引き受ける。
普段の私服がかっこいいからって、家の中も綺麗とか、家事ができそうとか思うなよ。
実際は、部屋なんて散らかり放題だし、ご飯はカップ麺とかレトルト系だし、夏なのに未だにコタツはだしっぱだし、確か賞味期限が一年前の食パンが冷蔵庫の奥に眠ってるし。
そういう人間なんだよ、俺は。
全てわかってもらおうとは思わない。
でも、イメージで人を判断するのはやめてほしい。
言われることと、本物の俺とのギャップが大きすぎて、俺はイメージどおりにならなきゃいけないのか、ってウンザリする。
「浩太ーっ! やっぱいるべきは心の友だよ!」
インターフォンを押してすぐ出てきた浩太にしがみつく。
フラれた後の恒例行事となってしまったことがなんだか悲しい。
「何、またフラれたの? 和幸」
グサッと心臓を抉られる。
ええ、フラれましたとも。
やっぱりさ、本気で好きだったから。結構ダメージでかいんですよ。
「またって言うな。お前なんか付き合ったこともないくせに!」
酒飲もうぜ、と言うと、仕方ないなってのってくれる。
親友だから、本当の自分もわかってくれてるから、ついそこに甘えてしまう。
「で、今回は何でフラれたの? デート行ったんだろ?」
程よく酒がまわってきた頃、浩太が無遠慮に聞いてくる。
こういうところ、昔から好きだ。
「行ったよ。んで、いつもと一緒、『イメージと違う』って」
思い出すとまた辛くなる。
なんだかんだで本気だったんだな、俺。
「和幸は和幸なのになー」
しんみりと言う浩太。
うん、やっぱり親友って大事だ。
「やっぱ俺には浩太だけだー。浩太超好き!」
言ったら頭の中で妙に納得する。
友達の中でも、浩太だけは常に別格だ。俺の中の最優先事項が浩太。
浩太なら、何でも出来るし、何をされても嫌じゃない。
「それって親友って意味? それとも別?」
「何言ってんだよ浩太。俺たち親友だろー!」
「……俺は違う意味で好き」
「え、何?」
かなり酔ってきたのか頭がクラクラする。
浩太の言っている言葉が聞き取れなくて聞き返したけど、何でもない、ってあしらわれた。
それから眩しいものを見るような目で微笑まれて、心臓がチクリと痛む。
何コレ。訳わかんない。
「お前だいぶ酔ってんだろ、おとなしく寝ろ」
隣の部屋にある浩太のベッドまで引き摺られて、布団を被される。
あー、まだ飲みたかったのにな、畜生。
薄れていく意識の中、頬に温かい感触を感じていた。
後書き
お久しぶりの短編追加。
と言ってもこれは続きありますが←
和幸くんは結構ぐうたらな人間(笑
次は浩太視点で書く予定。気長にお待ちいただけたら嬉しい限りです(・ω・*)
11.05.04.Wed
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