*Dearest*
34.満月の色
雪が降る静寂の中、俺は小さな手を引いて歩く。積もった雪を踏む音と二人の呼吸だけがこの夜の闇の中で聞こえる。
足元を照らす電灯が等間隔に並んでキラキラと雪を輝かせている、そんな何気ない帰り道。
「せんせー」
俺を呼ぶ幼い声が静寂を裂いた。
「ん?」
そちらを向けば月に照らされてキラキラと輝く銀髪が眩しかった。
寒さにすっかり頬を紅く染めて、吐く息は白い。
「お腹空いた」
綺麗な容姿なのに、溢れた言葉が可愛くて思わず吹き出してしまった。カカシはムッとした顔で俺を見た。
「あはっ…ごめん、ごめん。可愛くてさ…。ん、ちょっと待ってて…」
周りを見渡すと、肉まんの屋台を見つけ、オレは2つ買って1つをカカシに「はい」とニッコリ笑って差し出した。不機嫌な表情が和らいでそれを受け取ると深々と頭を下げる。
「ありがとうございます…」
こういうとこはホントに大人みたいにしっかりしてるなぁ…なんて関心していると、カカシは直ぐに幼い子どもに戻って、はむっと肉まんを頬張った。口のまわりに食べかすをつけながら。
「ホントに君は…」
小さく笑って呟いた後にオレはしゃがんでカカシの口のまわりについた食べかすを指先で取って、ニッコリと笑った。子ども扱いが嫌いなカカシの事だからまた叩かれるかなって思っていたのに、何時まで経ってもそれは無くてカカシは惚けた表情で俺を見ていた。
「どうしたの?」
「せんせーの髪…」
「髪?」
「お月様みたいだ」
驚いて固まってしまった。こんな子ども染みた台詞を聞いたのは初めてだったから…
「俺と一緒だね。銀と金…どっちも月の色だよ」
そう言って笑うカカシがいとおしくて、思わず抱き締めていた。カカシは何が起きたのか分からないといった様子だったけれど。
「カカシ…月は太陽がなければ輝けない。俺はお前を照らす太陽になるよ。だから…お前を月にしてしまった俺を許してくれ…カカシ…」
悔しい。この子は幼くして暗部という闇の世界に行く事になる。せめて、今だけは…子どものままで…。
「せんせ…?」
分からないと言った表情で見上げるカカシ。俺はきつく抱き締めたまま、この時を刻んだ。
雪が止む。影一つ。
想いはしんしんと積りゆく。
****
ミナト+子カカ。カカシが暗部に抜擢される前のお話。
琉流
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