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*Dearest*
39.心残り
ー夢?

美しい湖の真ん中に金髪の男が一人、立っている。

ーナルト?

夜風が吹き、その金が靡く。

ゆっくりと振り返る、その顔は見惑うことない己の師であった。

心臓が跳ね上がる。

「なんで…」

「よ、カカシ」

あの声だ。あの間抜けた笑顔も、全部…

「幻術?」

辺りを見渡す。誰もいない。気配も…ない。

「いいや、これはカカシの夢の中だよ。」

リアルな夢…だけど…

「大きくなったね…」

リアル過ぎるだろ…だって、まるで…。

先生は空を見上げた。釣られて見上げれば月が二つ。

「夢…なんですね」

悲しげに苦笑する。先生はしばらく見上げていたが、ふとこちらを見て微笑む。

「俺はお前がいるこの里を守りたかった」

ああ、その笑みが痛いよ…

「…それを言うために?わざわざ夢にまで出てきたの?」


地に落ちる視線。

ちゃんと、見て。

俺を、見てよ。


「っ…!!」

肩を掴む俺を目を丸くして見上げる俺の先生。

ああ、こんなにもいとおしい。

狂おしい程に。

あの時、言えなかった。

だから、夢だとしても、今抱き締めて伝えよう…

「先生の他に何もいらない…だから…お願いだから…側に居てよ…」

それだけ…たった、それだけ。

抱き締める身体が消えていくのがわかった。彼は、四代目火影はもう十年も前に死んだ。それは変わらない、事実。

だけど、これが夢ならば、それにすがったっていいだろ?

「カカシ…」

背中に手を回されるのがわかった。

「俺は…お前に会いたかったんだ…それだけなんだよ。最後に言いたかった。でも、言えばお前は俺を忘れられなくなってしまうだろうから…」

「アンタの置き土産で十分毎日思い出してるよ」

同じ金髪碧眼の少年。

先生は「そうか」と小さく笑って呟いた。

「じゃあ…俺の最後のワガママ」

身体が少し離れて、蒼い、美しい青が揺れているのを捉えた。

刹那。

柔らかな唇の感触が俺の唇に重なった。

先生は、泣いていた。

里の長なのに…いつもいつも、この人は子どもみたいで、だけど強くて真っ直ぐだ。

そんな先生を俺は心底愛してしまったんだろう。

「愛してます」

抱き締める。返事は聞かない。

また会える時が来る。

先生は耳元に口を寄せた。

「     」


ー…





「…せ…せん…先生!カカシ先生ってば!」

目を開ける。相変わらず元気いっぱいな自分の弟子が腹の上で暴れていた。

「ナ〜ル〜ト〜!お前ね、何で俺の部屋にいるわけ」

「だって、今日は任務なのに先生ってばちぃっとも来る気配ないから迎えに来てやったんだってばよ!」

満足げに笑うナルト。思わず笑ってしまう。

「…ほんとよくできた置き土産だよ」

「え?」

「なんでもないよ」



ー…俺の息子に惚れるなよ。


冗談。俺はあんた以外愛せないんだよ。

ありったけの未練残して、化けてでも出てきなさい。


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初カカシ視点。いちおーハッピーエンド?
琉流

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