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*Dearest*
25.自嘲
木の葉が戦火の渦に巻き込まれていた時代。

もはや何人殺めたのかもわからないくらいに真っ赤に染まっていた。心を殺さなければきっとこんな事は…できなかった。

「さて…」

一息つくと瞬身を使って敵の後ろに立ち、刹那にクナイを逆手に持ち直して正確に敵の心臓を狙って突き刺す。鈍い音と呻き声の後に敵が倒れるのを眺めた。

「ごめんね…」

血のニオイ。それは敵のものだけではなかった。脇腹に鈍痛が走る。

「痛ッ……」

何とか包帯で縛り付けて押さえていたが血が止まらず、限界が近かった。 痛みで呼吸が震える。木に寄りかかってずるずるとその場に座り込んだ。

「こんな時に…リンがいてくれたら…」

弟子に頼ろうとしている自分へ自嘲気味に呟くも、また草影に気配を感じてクナイを構える。

「俺ですよ」

のんびりとした声音のその人物は俺の弟子だった。彼は俺に近付くとしゃがみ込んでいつもの眠たそうな目で俺の顔を覗き込んだ。

「なんだ…カカシか…」

俺は深く息をついてクナイを降ろした。

「しっかりして下さい。あと敵が30は潜伏してます」


そう言いながらカカシは包帯を手慣れた手つきで外していく。俺はぼんやりとそれを眺めた。

「カカシ」

「何ですか」

「キスしよう」

「頭おかしくなりましたか」

「かもね…」

飄々と応える相手に苦笑を浮かべた。いや、むしろ痛みで発言がおかしくなってる自分への自嘲かもしれないけれど…。

「ありがと」

血止めの薬を塗り包帯を 巻き直してくれた弟子に礼を言うと、精一杯の笑顔を見せた。

「どういたしまして。立てますか?」

立ち上がり差し伸べた相手の手を取りなんとか立ち上がると木にまたもたれ掛かる。身体が重い…。

「っは…情けないな、こんな姿を弟子に晒すなんて…」

苦笑混じりに言えば肩を抱くカカシの手が微かに震えているのを感じた。怒り?恐怖?

…気が付けばカカシの胸に抱き寄せられていた。

「帰りましょう。そんな状態じゃ無理です。もう大切な人を失うのは嫌だ…アンタを失うのは嫌なんだよ」

絞り出した相手の声は震えていて、切実に聞こえた。

「大丈夫だよ……」

「帰りましょう」

「…ん。ごめん、それはダメだ」

「アンタはいつもそうだ…肝心なとこで頑固なんだから…」

「じゃあ、キスしてくれたら帰る」

「…やっぱり頭おかしくなりましたか」

「今度は本気。チャクラが足りないんだよ。カカシのちょうだい?こんな事頼めるのお前だけなんだ」

暫しの沈黙の後にカカシは呆れ顔で笑って口布を降ろして、唇が重なった。暖かな温もりが伝わる。

完全に敵に囲まれているのは知っていた。これをカカシ一人に任せるのは酷すぎる。

唇が離れ、お互いに背を合わせればクナイを構え直す。

「さて…」

「いきますか」

「カカシ、一緒に帰ろうね」

「喜んで」


さあ、一緒に帰ろう。



*****
カカシは暗部、ミナトは上忍設定。暗いですねー;次はギャグを書こう。うん。

琉流

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