[携帯モード] [URL送信]

短編集
人魚姫のその後の王子視点
題名そのまんまのお話ー




人魚姫の話を知っているか?
某夢の国の物語の方ではなくて童話の方だ


そう、あの物語。
王子を助け、人魚は愚かにもその人間に恋をし
魔女に頼み声をあげる
その変わりに足をもらい

でも恋はかなうことはなく
結局は海で泡になった。
そんな御伽話

お前はそんな人魚をどう思?

かわいそう?
ばか?

俺はこう思う
ごめんな、って

あの時の王子は俺なんだ



「あの子に会いたい?」

そう食えない笑顔で聞いてきた、魔女と呼ばれる存在
少女のような容姿
だが、その笑顔は少女には見えない

いや、そんなことはどうでもいい

「…カイリのことか?」

「そう。」

カイリは海で出会った、とても美しい少女
声が出なくて身寄りもなさそうで俺の城で住まわせていた
人懐っこくて特に俺にはまるで犬のようについてきていた。俺はその姿はとても可愛らしくて
大好きだった。もちろん恋愛的な意味で
俺の肩書じゃなくて、俺自身を見てくれたカイリ。まるで穢れを知らない、そして世間知らずなカイリ
すべてが愛おしかった

「愛しかったのなら、なぜほかの女と結婚したの?」

「あれは政略結婚だ。あの女は海で打ち上げられていた際に借りが出来てな。
結婚しなきゃ戦争を起こすと脅された」


沈没した船
俺は海の底に沈んでいた筈なのになぜか海に打ち上げられていた
そのとき、とても美しい歌声で意識が浮上した

だが、少しだけ浮上したが、結局また気を失い、気が付けば自室で介抱されていた
俺に結婚を迫っていた国の娘が俺を助けたらしく、借りができてしまい結婚せざるおえなかったし結婚を拒否すれば
戦争を起こされる。それをされたら、血を流す人間が大勢出来てしまう
だから俺が生贄になればいい
そう思い嫌々ながらの結婚だったのだ

そして、結婚してしばらくカイリは辛そうな顔をしていて、それの理由を聞きたかったが俺は忙しく聞ける暇がなく結局そのままにしていて、
カイリはいなくなった

俺はカイリがいなくなって1年たった今もカイリを探している


「…そうだったの」

「ああ。…お前はカイリを知っているのか?どんな関係だ、カイリはどこにいる」

そう言うと魔女は悲しげに笑った

「ええ。知っているわ。…ところで、王子様。今から私の話すこと聞いていただけます?
そして信じて頂きたいの。これを受け入れなければカイリの場所を教える訳にはいきません」

「…話してみろ」

俺が頷けばぽつぽつと話し始める

カイリは人魚で、俺が沈んでいくのを助けた
その際俺がめがさまさなくて困ったカイリは歌を歌い、俺は覚えていないが目を開け薄らとカイリを見たらしい
カイリは俺に一目ぼれ。魔女のところに行き足をもらう代わりに自分の声を差出た

そして俺と出会い、一緒にいた

カイリが人魚だったなんてにわかに信じがたいことだが

ならばフォークを櫛に使ったり文字の読み書きができなかったのは海に住んでいたから、と思うと少し受け入れられる


「信じて頂けます?」

「信じよう。…にしても人魚の命ともいえる声を差し出すとは…、」

「それだけあなたに本気でしたのよ。彼女は」

魔女は微笑み、だが次の瞬間には真剣な顔になりこういった

「カイリは…あなたが大好きだった。
足の代償声を失い
あなたと結ばれなければ泡になる。そんな条件を私が付きだして
それでも彼女はあなたのもとへ行くことを望んだ」

「…は」

今、なんていった
俺と結ばれなければ、泡になる

「…カイリは、」

「……彼女は、」

魔女は切ない顔をして、話を続ける
俺は嫌な予感で、心臓がばくばくし手足、いや全身が血の気が下がるのがわかる

聞いては、いけない

本能がそう告げる
だが、俺の手が耳を塞ぐ前に魔女はこう言った

「泡になった、」

心臓が鋭利ななにかに刺された感覚に陥った
息がひゅっとなる、うまく呼吸ができない

「あなたと結ばれることが人間になる条件だったけれど、あなたの命と引き換えにカイリは人間になれることも
知っていた。
だけど、彼女はそれを選ばず自ら泡になることを選んだ
…彼女はこの世にもう、いないの。骨さえも彼女は泡になった
文字通り、いないの」

魔女から真実を聞き足に、いや、もう全身に力が入らなくなった
情けなく床に体を置いた
もうプライドとか、どうでもいい

俺は、カイリを殺したんだ
国のためと、考えて結婚した俺は馬鹿な男だった
国は守れて好きな人間を守れないなんて。
俺を愛してくれたカイリを、俺が好きなカイリを、自分自身で死んだ
いや、死んだんじゃない

消えた。

もう会うことなんて、できない




「う、あああああああああああああああああ!!!」

「王子!?」

俺は護身用に持っていた剣を鞘から取り出し
驚く魔女を視界にも入れず

自分の腹へと突き立てた




「話、最後まで聞いてよ…。
いなくなった。って言ったけど…
あなたが自分で自分を殺せるほどの覚悟があるのなら、その命と引き換えに

カイリとあなたを転生させてあげる、て言おうとしたのに」

血塗れになった王子に魔女は言う
なんとか意識のある王子は魔女の言葉に目を見開き、頼む、とつぶやく

「次は、結ばれてよね。そうすれば私もあの子に声を返してあげられる」

魔女が涙声なのは気付かないふりをして
王子は魔女に微笑んで、息絶えた
そこから王子の意識もきえた






「王子」

魔女が隣で話しかけてきた

「んだよ…。と言うか王子と言うのはもうやめろ」

「王子としか呼ぶつもりはありません」

「はぁ…」

俺は転生した。
王子から生まれ変わった俺はただの一般市民だ
ここは日本で、容姿も違う

俺は生まれ変わったが魔女はそのままの姿
魔女は不死身みたいだ

「カイリ、探すんでしょ。お手伝いしますよ?」

今日俺は高校の入学式
魔女にカイリがここを受けると聞いて俺もここを受けにきた

「いや。良い。俺は自分で探す」

「余計なお世話でしたかね。ではお邪魔虫は退散しましょう
……カイリの声、私にもお聞かせください」

そう微笑むと魔女は消えた
俺は校門近くに立ちでカイリを探す。

ひたすら待ってもカイリは現れない
もう始業式も始まった
もしかして、ここじゃなかったのか?
もしかして、俺はカイリを見つけられなかったのか?

マイナスな思考が俺を犯す
少しあきらめが入ってきたころ、
ふと視界に入ってきた人物

ここの新入生みたいで男の生徒
綺麗な顔をしているが、

雰囲気も性別も、カイリと違う
けれど、こいつは

「カイリ、」

カイリだ。
間違いない
こいつはカイリだ。

駆け寄ってカイリを抱きしめる
もう離さない。抱きしめ心地は堅い。柔らかさも、胸もないし俺と同じ体の構造

「カイリ…」

少し体を離してカイリを見れば泣いていた

口をぱくぱくとしているのは多分声が出ないから。まだ声は取られたまんまなのは思いを言っていないからだろう


「カイリ…。好きだ」

そう言えばさらになくカイリ。
泣き止ませたくて涙を拭うように目元にキスを繰り返す
カイリは恥ずかしそうにうつむいて

「僕も、すきです」

そう言ったのだ
その言葉を聞いた瞬間思わず唇を奪う
驚愕の顔をしているカイリに構わずにキスを深めていく

それが終わったら、今までを取り返すようにたくさん話そう
魔女も呼んで昔話をしよう
色んなことをはなして、たくさん声を聴かせてくれ。
俺は、もう
絶対に離さないから、な

カイリ。愛している



あとがき
前サイトからこちらに移しました。人魚姫の名前はそこまで深く考えていません。
本当は人形姫の視点にするかな、と思ったんですがなんかそれだとありがちか、と思い急きょ王子視点で後悔させてみました
攻めが後悔するの大好きでおいしいです
魔法とかちょこちょこ出てくるのは管理人がそういうのが好きだからです
現実的なのもいいけど非日常的なものもいいですよね〜
お伽噺を絡ませるのもなかなかいいですね。パラレルワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールド!(笑)



4/8ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!