[携帯モード] [URL送信]

短編集
馬鹿な男の話
※シリアスダヨ!
※おもしろくないよ!
※死ネタだよ!
ハピエンなのかは微妙。
甘くもないよ。





 じゃあ、ここで。


 ああ。


 あ、そうだ。今日でこの関係終わりだから。


 ああ。


 はは。今まで付き合ってくれてあんがと。
 …なぁ、俺がいなくなったら少しは悲しんでくれるか?


 ……。


 ここは嘘でも悲しいって言うところだろ。


 悪い。


 ったくよ。本当にお前って嘘つけないよな。


 そうだな。


 まぁそういうところ俺は好きだったけどな。


 ……。


 じゃあな。…ありがとう。
さようなら。




そう言って俺からの返事を聞かず背をむき、一回こちらをみていつも通りのへらへらした笑顔を俺に見せ
その後は振り返らず帰っていった
俺はその背中をぼんやりと見送ったあと自分も帰路につくべくあいつが歩いた方向とは逆の方向を歩き始めた





そして2か月後。
あいつは死んだ
2か月前まで俺のとなりで馬鹿みたいにへらへらした笑顔をしてたやつは今では無表情で、でもどことなく穏やかな顔をして動かなかった
死に化粧のおかげで眠っているようにも見えた

みんながあいつを思って泣く中俺は泣かなかった
葬式にも参加して49日も終わって、俺の生活はいつもの日常に戻った





アルバイトが終わり俺は家にいた
煙草に火をつけ座る

煙を吐き出しながら、あいつのことを思い出す

あいつとは幼なじみだった
馬鹿な俺とは違って頭が良くていいところに就職して。
彼女がいないのは、簡単な話。
あいつはホモだった

それは中学ぐらいの時には知っていた
本人からカミングアウトされた時はビビったが、まぁそれは個人の自由なので構わなかった
それに俺に好意を持っているとかそんなんじゃなかったから平気だった

そのまま俺とあいつは親友とかそういうんじゃなかったがお互いに良くつるむときはつるんで
会わないときは全然会わないと言う関係だった

そんな関係が変わったのは確か今からちょうど1年前。桜が咲きかける頃だった
あいつは急に言ってきた



 俺と付き合ってくれないか、と
 自分はあと1年も生きていけない。だからその1年だけ俺にくれないか、と



俺は呆然とした
俺と付き合わないか、と言ったことに。
…あと1年も生きていけないと言われたことに。


 いつからお前は俺が好きだった?


驚きを隠しつつ聞いたつもりだったが驚き過ぎて少し顔に出ていたのかもしれない。あいつの顔が苦笑いだったから


 俺がお前にカミングアウトするずっと前からかな。

 まじか。全然気づかなかった。

 だって気付かないようにしてたし。お前が同性に見向きもしないと知ってたし。

 へぇー…。

 でも余命1年って言われて散々落ち込んで、あと1年しかないならやり残したことやってやろと思って。

 で、俺に告白したと。

 そうそう

 …つか余命1年ってなに。

 ん、ああ。俺さガンに犯されちまって。しかも悪性。かなり進行していて治る見込みは皆無。

 …ふーん。

 で?

 ん?

 お前の何十年のうちの1年、俺に捧げてくれるか?別に付き合うって言ってもキスしろとか抱いてとか抱かせてとか言わねぇし。

 ……わかった。捧げてやる。

 おう。ありがとうな。

俺は承諾した。別に彼女とかいなかったし。
俺にとったら長い人生のうちのたったの1年でもこいつにとったらあと大事な1年。
俺が好きと言ったときは少しなんか裏切られた気分になったけれど、それは目を瞑っておく。
そこから俺とあいつの1年限定の恋人関係が始まったのだ。

恋人になった後はあいつは最初に言った通りキスとか抱けとか抱かせろとか言わないかったし行動にもしなかった。
普通につるむときと同じように遊んだ。
違うのはあいつに遊びに誘われて一つも断らないこと。たとえ他の奴が先約として遊ぶことになっていたとしてもあいつが誘ってきたらあいつを優先した。
少しでもあいつが望む恋人同士に近づけられるように。

あと、違ったのは。
俺はあいつの家に泊まったり俺の家に泊まったりしたとき。
とにかく俺が眠っているとき、あいつは横向きに寝転がる俺に抱き着きながら泣いていた。

どんな思いをして泣いていたのかは俺は知らない。

抱き着いたりしない、とは言っていないし、これ以上こいつの思う恋人同士な行為を辞めさせたくはなかった。
それは多分こいつに対しての同情の気持ちだった。
だってこいつは俺を何年も好きでいて、俺に打ち明けずに、これからの長い人生を生きて俺とは友好関係で歩んでいくと決意していた、と本人からあのへらっとした笑顔で言っていた

だけど、これからを俺と歩んでいくことはできなくなる。その絶望は凄く大きかっただろう
やり残したことをやる、と言って俺に告白をしたもののキスも身体の関係も持つこともしない約束もしてしまい、手をつなぐとかのことも約束していないが、
人前ではそれも出来ない。

だから、俺が寝ているときに抱き着くぐらいならさせようと思った。


それ以外は相変わらず普通に友達と遊ぶように遊んだ。
話すときも特に話すこともなくぼんやりと時間を共に過ごしたときもあいつは変わらずへらっと笑っていた。
そして、最後にあいつと生きて会ったときも。


そこまで考えているといつの間に時間が経ったのか煙草の灰が落ちかけていて慌てて灰皿に落とした。

ケータイを見れば時間は9時を超えていた。
まだ風呂にも入っていないことに気付いて風呂の掃除をするべく風呂場へ向かった。





風呂から上がり冷蔵庫にあったビールを取り出しさっきと同じように座る
そしてケータイを確認してみれば、

新着メール一件。
送り主はあいつの名前。


驚いて慌ててそのメールを開いた。
見間違いかと思ったあいつの名前のメール。でもしっかりとあいつの名前が差出人の覧にある。
深呼吸をして文章に目を通す。



件名:
天国からのメール

本文:
なんちって(笑)

時間差でメールを送れるアプリもあるんだ。最近のケータイってすごいよな。
お前のことだから凄くビビったかもな。

さて。真面目な話になるんだが、お前がこのメールを読んでいるころ俺はいないんだと思う。
口では言えなかったこと、伝えたかったこと。全てここに書きます。
あ、恥ずかしいんで読んだあとはこのメールを削除してほしい。頼む。


昔、お前に俺はホモなんだとか言ったけど本当は違う。
お前だけが好きだった。男だとか女だとか、関係なくお前が好きなんだ。
完璧に俺に恋愛感情を持っていないお前に俺がホモと言うことで俺を気持ち悪がり距離を置いて欲しかった。
だけど、お前は驚いた様子はあったものの俺から距離を置くことなんてしなかった。ずっと自然体で俺に接してくれたな。
俺はお前に俺から離れて貰うために言ったのに、な。
だからそのときから覚悟した。俺はなにがあっても好意を言わずに、お前の隣にいようってな。
…それすらも叶わない願いだったみたいだけど

癌を宣告され俺はもうお前の隣にいれなくなると知った。
本当に苦しかった。居もしない神様とやらに憎しみを抱くぐらいに。
なぁ、神様って言う奴がいるならなんで俺を生んだんだろうな。
お前を好きになってしまって、叶わない恋をして、それも我慢してお前の隣にいれるだけで満足だと、
そう思ったのに。そう願ったのに。
それも駄目とか。吐き気がしたね、ほんとうに

絶望の淵にいたんだけど、ふと思った。
どうせ死ぬ命ならお前の隣に少しでもいさせて貰おうと
割と優しいお前を付け込めばそれぐらいの許可は貰えるだろうと、思った。
そしたら案の定承諾したよな。
本当にありがとう。貴重な1年を俺にくれてありがとう。
あのあと自分の家に帰ったとき、本気で泣いたぜ。嬉しくて。

まぁ恋人という恋人にはなれないんだけど、な。
だけど抱き着いたことを許してくれてありがとう。
あんとき起きていたんだろ?お前。
いびき、止まってたぞ?起きているときは

泣いた理由も多分知りたいと思うからそれも書いておく
本当の意味でお前と俺が恋人同士にはなれないと言う後悔。
こうなるんだったら死ぬ気で中学時代からアタックしておけば、て言う悔しさ、苦しさ。

もしかしたら違う運命なっていたのかもしれない。
そう考えてしまった。
…後悔先に立たずってこのことを言うんだろう。

あと俺の誘いを一つも断らずに乗ってくれてありがとう。
この約一年間とても幸せでした
欲を言えばキスとかそれ以上のことをしたかったけれどね

とにかくありがとう。
……さよならなんてやっぱり言いたくないんで、最後にお前に会ったとき言っちゃったけど
あれは…あれだ。帰りの挨拶として受け止めてくれ。

もし来世があるとしたら、そんときは後悔しないようお前を追いかけまわすからな!
次があるとすればまた絶対会うから、覚悟しとけ!
じゃあ、また





PS.お前少しぐらい泣けよ







読み切って俺がしたこと
メールの保護とビールを一気に煽ること
そして、あいつが死んでから初めて泣いた

別に悲しいから泣いているんじゃないからな。泣けって言うから仕方なく泣いてやってんだ
あれだし。
またって言われてうれしくて泣いているんじゃないから。
別にこれであいつが好きになったわけではないし。
よくよく考えれば言わなかったあいつが悪い。言ってくれれば驚きはしただろうがちゃんと考えたのにそれを自己完結しやがったから

「…またって言うなら、すぐに来いよ。」

そうは言ったものの、その『また』がいつになるかは知らない。
それに来世があるかは知らない。
だけど。もし。本当にもしあるとするならば

「覚悟しといてやるよ。バーカ」


俺はベランダの窓を開け空を仰ぎあいつが雲の上にいることを想像して笑った。

もうへらへら笑うあいつはこの世にいないけど。このメールを信じて来世を期待してみようか

…あ、でも今生きている間では待たないから。せいぜい生き延びてやるさ。
可愛い嫁さん貰って子供作って曾孫まで見たらそっちへ行くかもな。



「またな。


あと、お前は笑ってろ」






あとがき
結局結末が書きたかったものとそれてしまいました
もっと薄暗く終わらせたかったんですが長くなってなんか薄暗いエンドじゃあれかな?ってなってこのようになりました
友情に近いホモが好きなんです。
気が向いたら生まれ変わったこいつらを書くかも。
特に攻め受け意識せずに書きました。一途とかノンケとか最高。
薄暗いの大好きです



2/8ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!