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透明度。
自己紹介。



教室に入る前に立ち止まり南野は一瀬は話しかけた。

「じゃあ、俺が呼んだら入ってきて。」

「……」

「…えっとー…聞こえてた?」

「……」

「…俺が呼んだら入ってきてくれる?」

「……はい。」

聞いてみても返事が返ってこなくて、ぼんやりしている様子。仕方が無いからもう1回言ってみると今度は返事が返ってきた。
これは少しクラスでやっていけるか少し不安になった。
しばらく様子見て馴染めなさそうだったら話を聞いてみようかな。あまり聞くとうざがられることもあるので調節しつつ、だけどね。

そう思いながらまずは南野が教室に入っていった。
南野が入ってしばらくすれば大騒ぎするクラス。転校生がくることでテンションが上がったようだ。
しかも噂によれば美少年だとか、まぁ思いっきり生徒たちがいる時間に学校に登校したのだから見ている人がたくさんいたので事実ではあるのだが。

その間一瀬は相変わらず無関心でぼーっとしていた。どうせすぐに冷めた声を浴びされるのだ。慣れている。

南野は騒ぐ生徒をなんとかおとなしくさせて一瀬を呼んだ。


「一瀬くん、入って来て」

「……」

「…?入ってきて?」

2回呼んでようやく一瀬は教室に入ってきた。
扉を開ければ艶やかな黒髪に綺麗な灰色の目をした端正な顔をした美少年。
思わず女子も男子も騒ぐことを辞めて魅入ってしまう。
だが一瀬の灰色の瞳は何一つ映っていなかった。
それに気がつくものはまったくいなかった。

無言になってしまった教室に少し戸惑いつつ南野はクラスメートに自己紹介を求めた。
あと、名前は黒板に書くように、と命令した。
これには2回も言わずに1回でちゃんと聞いていたらしくチョークをとり自分の名前を書いた後

「…一瀬です。」

とそれだけ言葉にしたあと窓の外をぼんやりと眺め始める。。
自己紹介の仕方は確かに自由だけども…とは思ったのだけれど本人がこれ以上言うことがなければ、と思い席に座らせようとした。
のだが、


「はいはーい!質問!!一瀬くんのお誕生日ってぇいつなのぉ?」


クラスのちょっとギャル系の女子生徒の質問によりそれは叶わなかった。
いやいや、ちょっと空気読んでくれ…と南野は思ったがクラスの子も興味津々で一瀬を見ている。
もう逆に答えさせないのはこちらが読めていない感じになる。どうしたものかと考える南野を尻目に一瀬は口数少なめで質問に答える。


「……23日」

「え?今月の??」

「……」

無機質な目で彼女を見る一瀬。それに戸惑い女生徒は一瀬に不安そうに声をかける。


「あのー?」

「………12月」

「へ、へーそうなんだぁ」

しばらく間を置きやっと答えた。
一瀬の返答に困惑する女生徒。すこし引き気味に笑っている。
その出来事にあまり関係ないのか興味がないのか、続いて赤茶色の髪をした男子が質問した。



「一瀬の趣味ってなんだ??」

「……」

「…?」

「………」

「…おーい?聞こえてたかー?」


少し苛立った様子の男子生徒。せっかく質問したのに無言なのはどういうことなのか、と思う。
一瀬からしたら質問しないでくれた方がありがたかったようだが。
目に見えて男子生徒は苛立った様子だが一瀬は無言でその生徒を見続けた。


「…………」

「おい、聞いていんのかよ!?無視してんじゃねェよ!!」

見方によったら趣味を聞かれてどうこたえていいのかわからなくて困っているだけなのかもしれないが、考える素振りもなく無表情で立っているので無視されていると思ったようだ。
人は無視されることをきらう。
それはクラスの人間も同じ。
ヒソヒソ話があちこちから聞こえてくる。
美形だからえばっている、とかあいつなんなの、など。とにかく良い意味でのひそひそ話ではなさそうだ。それに興味なさ気に一瀬は視線だけ窓の外を見ている。
まるで自分は関係無いかのように。
それがさらにクラスメートに拍車をかけさせた。


本格的に教室に嫌な空気が流れそうで慌てて南野は質問タイムを終了し窓際の一番端の席に着くように言った。
未だひそひそと話す声は聞こえるが静かにさせ座ったのを確認して連絡事項を言ってHRを終わらせた。
その間男子生徒は南野に注意されるまで一瀬を睨み続けていた。


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あきゅろす。
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