SSS
これが長崎のお盆だ(パロ)
総悟→長崎人
土方→他県人
8月15日、総悟は長崎のお盆を見せてやると土方を呼んだ。
夕方、2人は墓参りに出掛けた。
「おい、何で今の時間に墓参りなんだ?遅すぎるだろ。」
「土方さん、長崎は15日の夕方からがメインなんですぜ。」
「は?」
ニヤリと笑い墓場に向かう。夕方の墓場なんか不気味な筈なのに総悟の足取りは軽い。
(こいつ、何か企んでんのか?)
内心凄くビビりながらも土方は付いて行った。
墓場に近付くにつれて土方は目を丸くする。
墓参りする時間帯ではないはずなのに大勢の家族連れが楽しそうに墓場に向かうのだ。
「総悟、ちょっ、この状況おかしくない!?えっ何?何で皆して墓場に向かってんの?何で楽しそうなの!?」
「だから言ったじゃねぇですかぃ。夕方からがメインだって。ここじゃ昼間に墓参り行く方が少ないですぜ。楽しくないし。」
「いやいやいや!!楽しむもんじゃねぇだろ!ってかさ、ずっと思ってたんだけど、お前が今持ってる花火、何?」
「何って?」
「何で墓参りで花火?お前線香と間違えるにも限度っちゅうもんが……」
「?何言ってんでぃ。墓場に行ったら花火するのは当然でさぁ。周り皆持ってんだろぃ。」
確かに周りを見回すとそれぞれの家庭が花火を持参していた。
「墓場で花火!!?そんな事したら怒られるだろ!」
「まぁまぁ。付いて来ればわかりまさぁ。」
黙って付いて行くこと数分。
目的の場所に着くと土方は固まった。
そこは墓場であるのにも関わらず明るく賑やかなのである。上空では夜火矢(ヤビヤ:ロケット花火の事)や飛び交い、足元では爆竹が轟音を立てて飛び散り、至る所で打ち上げや手持ち花火をやっていた。それだけならまだしも、弁当やビールを持参し、墓の前でピクニックの様に囲んで食事をしている家庭も。
「なっ、なんじゃこりゃァァァ!!!!」
「驚きやした?これが15日の長崎の墓場でさぁ。言っておきやすが県内ほぼ全部がこんな状態ですからね。」
「ちょっ、これ怒られねぇの!!?」
「怒る?何で?俺達にとっちゃご先祖様を迎えるちゃんとしたもんでさぁ。それにここの人達はこれが当たり前。当たり前の事を怒る人はいないでしょ。ほら、墓参りしましょう。花火はその後からでさぁ。」
お参りをした後から花火をするのが礼儀。
2人は花火の中、お参りをすませた。
「よぉし!んじゃ花火タイムといきやすぜ!」
総悟も持参していた花火を取り出した。
長崎の墓地は親戚中集まって飲み食べしたり、花火を打ち上げれる様に他県よりも広く出来ている。墓石の隣には座れるように石のイスも作られているのだ。
「土方さん!夜火矢の連射しやしょうぜ!」
「やびや?」
「あ〜えっと、ロケット花火の事でさぁ。こっちでは夜火矢(やびや)って言うんでさぁ。」
「へ〜。」
セットするとチャッカマンで点火し、次々と飛ばしていった。周りからも「おぉぉ!」と声があがる。
「んじゃ次は手持ち発射でさぁ。」
「危ねぇだろ。火傷するぞ。」
「甘いな〜。この年で手持ち発射出来ないってのはビビリって事になるんですぜ。男なら誰もが通る道でさぁ。」
「そうなのか?」
「ここら辺ではね。」
総悟は指の間に挟み、次々に打ち上げた。
楽しんでいると急に背後からシュジャァァ!と音が聴こえてきた。見ると噴き上げ花火が火柱を立てている。
「うわ〜派手だな。」
「あ〜あそこ初盆の所でさぁ。」
「何でわかるんだよ。」
「あそこの家、チョウチンが8つも掛かってんだろぃ?初盆の家は沢山チョウチンを付けて一際派手な花火をするんでさぁ。」
「んじゃ沢山チョウチンがある墓は…。」
「全部初盆。」
墓場が明るいわけだ。チョウチンはいくつも煌々とつき、花火はいたる所でやっている。それに周りは決してしんみりなどしていなく、明るい笑い声。
他県の人から見ると罰当たりに思われるがこのスタイルが長崎にとってご先祖様をお迎えする最高のおもてなしなのだ。
「あ〜楽しかった!帰りましょうか。」
「そうだな。」
花火が底をつき、最後にもう一度お参りをしてどんちゃん騒ぎの墓場を後にした。
だが、これはただの前戯にしかすぎない――
夕食を食べ終わり一時すると総悟は外に出るぞと言い出した。
「外に出て何すんだよ。蚊に食われるぞ。」
「今からは精霊船(しょうろうぶね)の時間でさぁ!見に行きやすよ!」
「精霊船ってよくニュースでやってる?あっ、行く行く。」
2人はまた出掛けた。
『ちゃんこ、ちゃんこ、どーいどい!』
かけ声のすぐ後に爆竹を鳴らす。
そうやって初盆の家庭は精霊船を港まで担いで運ぶのだ。
それが一隻ならまだしも何隻もある。
その日の夜、長崎は爆竹がひっきりなしに轟音を響かす土地となるのだ。
バリバリバリバリ!!!
「うおっ!!うるせぇιお前耳大丈夫なのかよ!」
「ちゃんと耳ふさいでまさぁ!」
耳を塞いだぐらいがちょうどいい。
大きさや装飾など様々の船が●●家と大きく掲げ町を歩く。
それは故人を哀しむのではなく、まるでその家の誇りのように。
爆竹を箱に大量に詰め込み、爆発させながら船をグリグリと回すと周りからは歓声が上がる。
実際爆竹が鳴ってるのか只の爆発事故かわからない感じだが。
「すげぇな。」
「だろぃ?あっ、土方さん危ねぇよ。」
総悟は土方より数歩後ろに下がった。その直後、土方の周りに爆竹が飛んできて轟音を鳴らす。
「Σうおっ!!!!」
「だから危ないって言ったのに。」
「テメェだけ避難してんなよ!!俺も連れていけよ!」
船が近くに来たら爆竹を投げられるのも……まぁお約束。
どうこうしながらもあっという間に時間は過ぎ、精霊流しも終わった。
「あ〜まだ耳痛てぇ。俺達どんくらいいたんだ?」
「2時間ぐらいですかねぃ。」
「お前ケロッてしてんな。」
「そりゃ慣れてますから。それにまだ終わっちゃないですぜ。」
「へ?」
「今から家戻って花火でさぁ!大量に買ってやすから☆」
「はぁ?バカじゃない?やりすぎだろ。夕方からずっと花火尽くしなんだけど。」
「それが?夕方から今までは子供はやっちゃいけない大人の花火の時間でさぁ。で、今からは子供がやる時間。花火だって大体が線香花火を最後にやるでしょ?今からはする花火は今日の締め、線香花火の役割なんでさぁ。わかりやしたかぃ?」
「わかりません。なんでそんなに花火をしたがるのかわかりません。」
「郷に入りては郷に従え。って事で帰って花火でさぁ!」
「何で15日はこんなに花火尽くしなんだよ(泣)」
2人は家に戻ると大量の花火でまた遊んだのでした。
長崎のお盆、一度いらっしゃってはどうですか?
おわり
これ実話です。地方によって多少異なりますが大体が15日はこんな事してます。
高校卒業するまで墓で花火は長崎だけって知らなかった!全国共通と思っていました。
ほとんどの人が墓で花火は長崎だけって知らないとおもいますよ。
15日は本当、墓参り行って花火、ご飯食べて精霊流し、帰って花火でした。
家でそれぞれでしょうけど、私の所は13、14は何もしません。やっぱ15日でしょう!
あとがきが長くなりましたι
このネタ昔から書きたかったから書けて良かったです!
8月15日は一年で一番の行事です☆
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